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鍵は命に直結する。安全性を重視した理由:Inside TiNK-ハードのこだわり

株式会社tsumug(ツムグ)が提供する「TiNK(ティンク)シリーズ」には作り手の拘りが随所にあります。そのこだわりを読み解いてみましょう。今回はハードのこだわりです。

株式会社tsumugが提供するコネクティッド・ロック「TiNK」には、どのようなこだわりがあるのでしょうか。
今回は「ハードのこだわり」について、プロトタイプの開発から参加している青木さんに話しを聞きました。

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プロトタイプの開発から参加している青木 和律さん

tsumugに関わったきっかけ

元々大手重工業メーカーで産業用冷凍設備や大規模空調システムの開発に従事していた青木さんには、「農業IoTをやりたい」という野望がありました。

しかし、地方農家、特に少子高齢化が進む過疎地や地方では、一人でマンションに住んでいる老人が増えてしまっています。

体調不良やトラブルが起きた際に救急車をなんとか呼べたとしても鍵を開錠できず、遠くに住んでいる大家さんを呼んだり、警察の協力を得ようとすると救出まで時間がかかってしまうこともあります。

そのため、「人の安全」「見守り」を総合的にできる「安心して使えるデバイス」が必要であり普及させたいと考えていました。

そんな時に、tsumugのプロトタイプの話を耳にします。「スマートロックなら、市町村や自治体と連携して有事の際に使ってもらえたら、番号や信号でスムーズに対応できたり、鍵の開錠時間などで見守りにも使えるのではないか」と思い、牧田さんに「tsumugのスマートロックを買いたい。LTEを載せているならぜひ使いたい」と連絡し、開発に協力したとのことです。

スマートロックには通信が不可欠ですが、住居によってはWi-Fiが無い場所もあり、なるべく設置したらすぐ使えるように、LTE通信は必須でした。

また、当時のLTEモデムは、価格の下落が進んでいて、一年間で半額になるなど調達がしやすくなってきていたため、LTEモデムは普及しそうという「パーツの将来性」もあり、「使いたいな」と考えていたそうです。

そのタイミングでLTE回線を使ったサービス「さくらの IoT プラットフォーム」(現「sakura.io」)のα版が発表になり、採用されました。

現在のさくらIoTプラットフォーム(sakura.io)のWebページ

安全、命を守るために徹底していること

青木さんがハードウェアの設計・素材選びなどで重視したのは「品質」でした。

TiNKはドアに設置するため、室外機は雨風にさらされてしまいますし、立地によっては直射日光などの熱にも耐えられなければなりません。
室内機も、窓と同じように気温によって結露が生じてしまい水にさらされる危険があります。

そこで青木さんは、産業基準以上の品質を確保するために、車載基準の電子部品品質クラスを採用することにしました。


  • 防水、防塵
  • 下は-10℃上は70℃という、広い温度レンジ
  • ギア駆動箇所はかなりしっかりしたものに

という仕様にして、寒冷地から砂漠まで、どんな気候の中でも大丈夫な構成になっています。

他にも、他社製品であるような室内機をサムターンにかぶせて、粘着テープで固定されているようなものだと、熱や結露などで粘着力が弱まったときに、自重で落ちてしまいますが、TiNKはドアに完全に取り付けるタイプになっており、落ちることがありません。これも絶対条件でした。

「鍵は命に直結する。人を殺すかもしれない。」と青木さんは言います。
ドアが勝手に空いてしまえば、強盗などに入られてしまいますし、火事になったときにドアが開かなければ避難できなくなってしまいます。
万が一、クラッチ機構(モーターなど)が火事で解け落ちてしまったとしても、サムターンは絶対回るような設計になっていて、家の外に出ることができます。

tsumugのハードが決まるまで

1つから2つに

tsumugのコネクティッド・ロック「TiNK」は、扉の外側に操作部、内側に鍵機構部の計2か所に取り付けて使用します。
ここに至るまでには、さまざまな形・デザインが検討されてきました。デザインを先に決定し、その中に納まるようバッテリー以外の機構設計を工夫しています。

初期のTiNKは「扉の外側に1つ設置するタイプ」で、鍵穴を外して設置する仕様でした。

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片面だけ設置するタイプだった時期のプロトタイプの1つ

しかし、外側に1つだと生産時のハードルが高く、物理カギをどうしてもつけたいというニーズに答えられなくなる点。
また、セキュリティ面で問題があり、いくら強く作っても「絶対に壊されない」という保証がなく、「絶対に壊れないものは作れないから、何としてもあけられてしまうなら、内側にあるのが正しいのでは」と、開錠機構を内側に設置することになりました。
そうして、今の「室外機・室内機」の2つを取り付ける仕様に。

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サムターン部にセットしてある室内機とタッチパネル液晶の室外機

7セグから液晶に

7セグメントディスプレイ(アラビア数字1文字を表現するために、7つのセグメントを用意し、個別に点灯・消灯する)を使ったハードも、検討した時期がありました。

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当初は 7セグメントディスプレイを検討していた

しかし、7セグに使われいてるLEDランプをそのまま使うと、光がパネルに反射してボヤっとした表現になってしまい、それを防ごうとすると、LEDランプごとに樹脂で「遮蔽板」をつくり囲わなければなりません。
また、ランプが一つでも欠けると見た目も悪くなってしまうので「量産も大変、修理も大変」ということで、それなら液晶がいいよねと、7セグは正式採用には至りませんでした。

独自バッテリーの作成

外観のサイズは、小さくしようと思えばいくらでも小さくできますが、一番ネックなのはバッテリーでした。
TiNKでは独自のバッテリーを開発し、搭載しています。バッテリー内部のセルは薄いほうが作りやすく、厚さのあるバッテリーをそのまま作ろうとすると角から破れてしまうので、TiNKで使っているバッテリーの内部は、角から破れない最大サイズのセルが2つ内蔵され、1つのバッテリーとして扱えるような回路構成になっています。室外機に1個、室内機に2個の合計3個使っています。

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TiNK C室内機と独自バッテリーのモック

さまざまな環境に対応するためのアタッチメント

TiNKが標準で対応している鍵はサムターン式(90度回転させるタイプ)ですが、1、2回転させるタイプの鍵など、さまざまな種類の鍵に「アタッチメント」を使って対応できるよう工夫されています。

今後の展望

ハード面の完成度はかなり高く、あとは運用面でのソフトウェア・アップデートが中心だ、と青木さんは言います。まずは既存のアパート・マンションを中心にTiNKを設置してもらい、2021年には100万台の出荷をすることが目標とのこと。

また、普及していく中で、あらかじめTiNKを搭載する予定の物件では、ドア内蔵型(電源を直接建物から取り込む仕様)にもできるそうで、そうするとバッテリーがなくなることで約半分ほどのサイズにもなり、最終的には壁に埋めこまれて、突起がない状態にもできるということです。

これからが大事な時期

青木さんにTiNKを作っていて楽しかったことを聞いてみましたが、TiNKを作っている中でうれしいと感じたことはあまりなく、つらい・大変なことばかりと言います。

「リリースし、普及が進み、いろんな場所でTiNKが使われる中で、故障・修理率が低かったとき、なにか役に立ったときがきっとうれしさを感じるときなんだろう」(青木)

故障・修理率を低くするため、TiNKはすべてを日本国内で生産しています。
日本国内生産のほうが精度が高く、そして生産ラインとのコミュニケーションがとりやすい点、また海外生産だと品質の担保ができず、かなり精密な製品のため、交換対応しかできないので、結果コストも高くなるためです。

なにより、TiNKはこれから大きく広がっていく製品です。初めて使った人の信頼を得られるように国内生産を続ける予定とのことです。


シンプルでスタイリッシュなデザインの中には、安全性を最大限に考慮したアイデアがいっぱい詰まっていました。

その頑丈さで、日本全国北海道から沖縄まで、さまざまな気候の地域でTiNKを見れる日が待ち遠しいですね。

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