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生活の中にある『カギ』の存在をなくしたい :Inside TiNK-外観のこだわり

株式会社tsumug(ツムグ)が提供する「TiNKシリーズ」には作り手のこだわりが随所にあります。そのこだわりを読み解いてみましょう。まずは外観のこだわりです。

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TiNKのハードウェアデザインを担当した上町達也さん

株式会社tsumugが発売するコネクティッド・ロック「TiNK」には、どのようなこだわりがあるのでしょうか。

まずは「外観のこだわり」について、福岡市で行なわれた「tsumug Tech Day 1st」でのtsumug代表取締役の牧田恵理さんとTiNKのハードウェアデザインを担当した上町達也さんのトークイベントから読み解いてみましょう。

「デザイナー」としてではなく「パートナー」として

牧田さんが上町さんへオファーしたのは2016年3月24日のこと。 子供向けのデバイスやサービスの開発をするPiccolo株式会社(現VIVITA株式会社)の立ち上げのときから知り合いだった上町さんに、「どうしても上町さんのデザインでTiNKを世に出したい」「デザイナーとしてではなく、一緒にやってほしい」と口説いたそうです。

「私はPiccolo社を、そこで開発したものが製品化する前に辞めてしまったのですが、そのときに唯一叱ってくれたのが上町さんでした」(牧田)

「一緒に会社の立ち上げからやっていたので、チームとうまくいかなくなっていたりネガティブな要素があったりする中で、(辞めようとしていたのが)悔しかったんですよね」(上町)

上町さんが2013年に立ち上げた会社「secca-雪花-」は、伝統技術から最新技術まで、さまざまな技術を掛け合わせた製品を発表している職人集団です。

前職で、プロダクトの企画・量産などを経験したことが大きかったそうです。

「5年半も開発し、デザインも100個以上つくったのに、世に出ると1年後にはワゴンセールになってしまう。労力や情熱をもって作った思いやクリエイティブが消費されすぎなのではないか、との疑問から自分の手で作って、提供するところまでやりたくて、この会社を立ち上げました」(上町)

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seccaのサイト(http://secca.co.jp/)

ハードウェアは目立たないように

上町さんはTiNKのロードマップにある「生活の中にあるカギの存在をなくす」に共感し、TiNKのデザインとして、シンプルな形や、あまり個性のない配色を当初から提案していました。

「ユーザーそれぞれの生活様式や生活スタイルが主役であって、ハードウェアそのものが主張するべきではないと考えました」(上町)

それに加えて「(物件ごとに鍵の位置が異なるため)鍵の上でも下でも、自由な場所に設置できるようにしてほしい」「天地のないデザインを作ってほしい」と牧田さんからのオーダーで初期の設計がされました。

「意匠の視覚的なバランスを操作エリアとその他のエリアで1:1にしたり、ロゴマークや機能表示も天地対称にすることで、本体の天地が逆さまに設置されても成立するようデザインしました。また、昔ながらの7セグ(7セグメントディスプレイ:デジタル数字を表示するディスプレイ)を使って色々なステータスを表示をしようかと提案をしていました」(上町)

牧田さんは、開発当時は「7セグのモジュールが安い」と思っていたそうで、7セグでなにかリッチな表現をしてくださいとお願いをしていたそうですが、実際にはコスト的に安くもなく、表示すべき内容も増えたことで正式デザインには採用されませんでした。

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当初は7セグで表示しようとしていた

増える仕様、大きくなる本体

当初は理想のサイズとしてスリムなデザインを提案していましたが、開発が進むなかでエンジニアから共有される設計条件がくるたびにそれにあわせ、どんどん太く大きくなってきてしまいます。

「届いた設計条件を実現するために、サイズがどんどん大きくなってしまったので、なるべくドアに対して突出量を感じないように両端を絞って、シンプルに見せられないかなと。ボリュームがあるとドアノブに手をかける際に手の導線を妨げ、開けにくくなってしまうこともあるので、そこも実際にモデルを作り何度も検証しました」(上町)

しかし、手にあたる箇所を可能な限りそぎ落としてスリムにし、手が極力当たらないよう調整を繰り返しても、開発が進むにつれてどんどん大きくなってしまいます。 また当時は、室外にすべての機構を設置する仕様であったため、安全性を担保するために、5ミリ厚ぐらいの鋳造品でカバーするなど、悪循環に陥っていたそうです。

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当初のデザインより太いデザインに

開けるまでの導線をよりシンプルに

初期の仕様では室外機・室外機で分けることを想定しておらず、片方の一つの端末にすべてを入れて鍵穴をなくそうとしていました。上町さんだけ、当初からドアの外側にデバイスのすべてがあることに対して反対意見を述べていました。

「いまだから言いますけど、最初『ドアの外側にすべての心臓部をもってこよう』という仕様に、最初から反対をしていて、安全な日本とは言え、ちょっとでも誰かに悪さされると家に入れないってどうなんだろう?って」(上町)

ですが当時はチームの方針で、室内、室外と2つ作ることは却下。その仕様の中で、上町さんは試行錯誤をします。

しかし、2016年8月ごろ、いろいろ議論を重ねた中で、室外のアプローチ部と室内の心臓部でデバイスを分ける方針に変更になり、ユーザビリティを考えたシンプルなデザインを提案していくことになります。実際の使用感を確かめるために3Dプリンターで出力してみるなど、検証が進みました。

そのなかでさまざまなデザインが生まれます。

たとえば、ドアに取り付ける位置を調整するだけで子供や大人、誰でも操作がしやすくなるような操作面の傾斜もその1つです。

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操作面に傾斜をつけユーザビリティを向上

「ユーザビリティも、なるべく鍵を開けるまでの導線をシンプルにするために、いろんなものをつけるのではなく、PINコードによる解錠をダイアルを回転させるだけでできないかとか、(ドアの種類によっては)ドアの幅が制限されるので、縦長のデザインなど様々なデザインで検証しました。考えられるアイデアはすぐ形にして実物サイズで触ってみることで、人間とモノの関係を最低限確認、評価をして、その中でデザインを絞っていきました。」(上町)

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開けるまでの導線をよりシンプルに

使いやすさとデザインの共存

生活に溶け込むような、自然で使いやすいデザインが完成するまでには、機械とそれを包むハードのサイズ調整、そして安全性を考慮した、扉の「表と裏」のデバイス機能の配置問題など、さまざまな要素が熟考されていました。

何気ないものが、大きな可能性を秘めているのを外観から感じ取ってもらえるでしょうか。

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生活に溶け込むようなデザインに

文:西村 太一
人物写真:集合写真家 武市 真拓 http://hiro.takechi.jp



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