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私たちが提供するのは唯一無二のソリューション:IoTプラットフォーム「Afero」CEO、Joe Britt単独インタビュー

株式会社tsumugコネクティッド・ロック「TiNK(ティンク)」で採用しているソリューション「Afero」は、米国シリコンバレーのスタートアップAfero社が提供しています。 このテクノロジーについては、 以前tsumug edgeでも紹介 しましたが、このセキュアIoTプラットフォームを開発した男とは、いったいどういう人物なのでしょうか。

Afero創業者でエンジニアのJoe Brittさんにインタビューしました。

スマートデバイス開発のDanger創業からAndroidを経て、2度目の創業へ

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Afero CEO & Co-Founder, Joe Brittさん

Joe Brittさんは、およそ25年前の1992年、Apple社のソフトウェアエンジニアとしてキャリアをスタートしました。

当時はPDA(携帯情報端末)のApple Newtonが発表されたころで、スマートデバイスの草創期。
以後、ゲーム機向けプラットフォームを開発した3DO社、オンラインゲーム・プラットフォームのカタパルトエンタテイメント、インターネットテレビ用セットトップ・ボックスを開発したWebTVネットワークス社と、スマートデバイス業界のエンジニアとしての経験を重ねてきました。

Joeさんは当時の経験をこう語ります。

「デザイン、ユーザーエクスペリエンス、コンテンツ、エンターテイメントなど、さまざまな機能を、当時非力だったハードウェアに組み込むという仕事をしていたんです。具体的にはフロントエンド、ミドルウェア、バックエンドを統合して、実際に組込みソフトウェアとして動作させるソリューションを開発していました」

その後、2000年にDanger Researchを創業。CTOとしてアメリカの通信会社T-Mobileの通信機能付きPDA「T-Mobile Sidekick」の開発をリードし、全米で名を轟かせましたが、2008年にDangerがマイクロソフトに買収されました。

そして2010年にGoogleに参画し、4年間に渡り様々なAndroidハードウェアの開発を統括しました。

さらに2014年、当時MOVIDA JAPANに所属していた松村慎一郎さんとともにIoTプラットフォームのスタートアップ「Afero」を創業します。

「スマートデバイス」から「IoTプラットフォーム」にシフトした理由

Afero創業当初、そのスコープとしてIoTにフォーカスしたのは、当然の流れだったとJoeさんは言います。

「IoTは特に挑戦的なテクノロジーで、さまざまな制約が存在するんです。携帯性、電力消費、半導体の性能、セキュリティ、クラウド、人工知能(AI)など、たくさんの要素を検討しなければなりません」

これらIoTを構成する要素技術は、当時は開発現場ではバラバラに存在していて、統合されたソリューションがありませんでした。

小さなセンサーやデバイスをクラウドにつなげることは、大きなチャンス。今まで積み上げてきたスマートデバイス開発経験をもとに、これらを統合したIoTプラットフォームを提供すれば、世の中がより良くなるのではないか。

そう考えたAfero創業当時のメンバーは、なんと専用暗号チップとファームウェアを自力で開発。
家電製品にセキュアなIoT接続を提供するためのクラウドとSDK、基板のプロトタイプを自社で開発してしまったのです。

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設立当時のコードネーム:Kibanのプロトタイプ。家電製品を実際にハックして動作させている。

「最も重要なことは、(Afero起業は)世界中から優秀なエンジニアを引き寄せるのに十分魅力的なチャレンジだったということ。
すべてが統合され、インタラクティブで、セキュリティが担保された、使いやすい次世代IoTプラットフォーム。こんなユニークな(市場でたったひとつの)ソリューションを開発できるのは、私たちしかいないと思ったんです。IoTへのフォーカスは、私にとって論理的(に必然なこと)でした」

Aferoの提供するIoTソリューションとは

現状、多くの人がそう感じているように、IoT開発における最優先の課題は「セキュリティ」。
これをシンプルに解決するため、Aferoは専用の暗号チップ上で動作する鍵管理の仕組みを構築しました。

あわせて、デバイスセットアップを簡単にするための「Onboarding機能」を開発。
これはBluetoothのペアリング設定をQRコードを使って簡便化するもので、アメリカの家電メーカーKenmore社の製品の例では、初期設定の途中で失敗するユーザーの割合が劇的に低下したそうです。

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米Kenmore社のエアコンはQRコードで設定が可能

また、AferoチップとSDKを使うことで、クラウド接続が高度に抽象化されるので、たとえばIoTデバイスに任意の無線機能を搭載することもできます。

たとえばエアコンをスマホから制御する場合、Aferoを用いると、スマホからエアコンへの接続をBluetooth単独にすることも、BluetoothとWi-Fiのハイブリッドにすることも、LTE接続を併用したりすることも可能です。
接続のための細かい部分はAferoのチップとSDKに任せることで、開発者は接続機能やセキュリティ機能の開発に煩わされることなく、エアコンを制御する機能そのものに集中できるのです。

「複数のエンジニアを集めて、デバイスが安全にクラウド接続するよう互いに調整して、またクラウドからモバイルアプリと安全にやり取りするようにコーディネートしたり……。(従来のやり方だと)10人単位、場合によっては100人単位のエンジニアを動かして、それぞれが別々に開発して連携させる必要がありました。
Aferoを使えば、”デバイスはこういった動作をしてね””スマホはアレとアレをしてね”といったように、開発者はハイレベルな設計作業にフォーカスでき、細かい部分は私たちのAferoプラットフォームに任せることができるんです」

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Aferoシステムの全体アーキテクチャー

プラットフォーマーとしての人材を強化、安定稼働に取り組む

Aferoプラットフォームのプロトタイプは早い段階で完成しましたが、そこからスケールさせる段階でさまざまな課題が現れます。

Joeさんは当時の苦労についてこう語ります。

「設立直後はプラットフォームの要素を固めて、ひとまず動作させることに成功したのですが、その後次々と難題が現れたんです。
今になって思うと、それぞれのピースを作ってレイアウトしてみて初めて、その(パズルのような)課題を解決するのが難しいことに気づくんですよ。

たとえば、家電メーカーのようなスケールの大きい案件では、常にすべてのピースを正しく動作させないといけません。
一方、組み込みデバイスでは一定のコストに収まるようにしないといけないし、スマートフォンのユーザー・エクスペリエンスの場合は、適切にわかりやすくする必要があるのです。 そして、問題が起こってから気づくのですが、クラウドが大量接続を適切に処理できるように常に安定稼働させる必要があるのです」

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インフラの構築もその課題のひとつで、大量のIoTデバイスを支えるクラウドは、計画停止することは許されません。 AferoのメンバーにはTwitter創業時の社員がいて、インスタントメッセージのインフラを構築したノウハウが生きたそうです。

NestやGoogle、Netflixからも人材を確保して、分散・大量のデータを扱えるクラウドインフラを自前で構築。今も1つのプロバイダーが落ちても別のプロバイダーがバックアップできるよう開発を続けています。

「当初はAWSから始めましたが、長期ビジョンとしては、どのクラウドプロバイダーでも動作するよう設計しています。最近はGoogleクラウドにも移植したので、顧客が望むならGoogleクラウドでも動作できます。マイクロソフトのAzureも同様。これからは、特定のプロバイダーにロックインしないで、Aferoを稼働させることができるのです。

実際、昨年Amazonではアメリカの複数箇所にまたがる大規模障害が起こりました。このときもAferoに元来備わっている冗長性のおかげで、インスタンスが常に動き続けました。このことにエアコンメーカーのKenmore社はとても満足しているようです」

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今まで世になかったユニークなIoTプラットフォームを作り、それをスケールさせるという難題に取り組んできたAferoのJoeさん。 インタビュー後編では今後のIoTの課題と日本のエンジニアへの期待について聞いていきます。

文・写真:菊地 仁

通信会社勤務。2014年より2018年2月まで米国シリコンバレーオフィスにてスタートアップ各社との協業など、事業開発・商品開発業務に従事。趣味はIoT開発ボードの収集だが、日本に戻ってからは時間を確保できないのが悩み。

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