「つくる人」と「つかう人」のこだわりを追求する

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IoTが生活にナチュラルに溶け込むように:ヤフー水田千惠、dotstudioちゃんとくIoT対談

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株式会社tsumugコネクティッド・ロック「TiNK(ティンク)」を通じ、世の中のさまざまなサービスとつながることで、安心で豊かな世界を実現していこうとしています。では近い未来のIoTのある生活は、どのようになっていくのでしょうか。 IoTの最前線でさまざまなテクノロジーを知るおふたり、ちゃんとくさん(dotstudio株式会社)と水田千惠(みずた・ちえ)さん(ヤフー株式会社)にこれから期待するテクノロジーとIoTのある生活についてざっくばらんに語っていただきました。

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ちゃんとく(dotstudio株式会社):日本最大級のIoTエンジニアコミュニティであるIoTLT主宰ののびすけさんのもと「ものづくりは楽しい」をモットーに、IoTに関する研修・コンサルティングやIoT開発ボードの制作、プログラミング教育やハッカソンイベントのオーガナイズなど、多方面に活動している。

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水田千惠(ヤフー株式会社):日本最大規模のハッカソンYahoo! JAPAN HackDayやYahoo! JAPAN Tech Conferenceなど、さまざまなイベントを通じた技術ブランディングや、新規テクノロジー領域のリサーチ、ヤフー社内外とのプロトタイプ推進をCTO直下のDeveloper Relations部門で行っている。

IoTLTというコミュニティ

水田 2、3年前からお互い知ってるのに、こうしてお話しするのははじめてですよね。

ちゃんとく そうですね、水田さんとじっくりお話しするのははじめてです。最初にお会いしたころは、まだ私はWebのエンジニアをやっていて。

今私が所属しているdotstudio株式会社は、つくるのが半分、教えるのが半分といった感じで、ものづくりって楽しいよね、といった授業をやったり、人を集めてハンズオンイベントをやったり、ネタ記事を書いたり、いろいろなコミュニティに登壇したり………っていうことをやっていて、遊びながら仕事してるって感じです(笑)。

水田 最初にお会いしたのは「IoTLT」(※IoTに関するライトニングトークをするイベント)ですよね。2015年ごろに、東京ミッドタウン(当時のヤフー本社)で開催したいっていうお話しをdotstudio代表ののびすけさんからいただいたんです。

IoTLTコミュニティの存在は以前より噂で聞いていたんですが、実際行ってみたらすごい盛り上がってて。なんなんだ、みんな熱狂してるって(笑)。

ちゃんとく そうですよね。私もこんな楽しんでていいのかな、みたいな気持ちで参加していました(笑)。

水田 プロトタイプでも、成熟したものであっても、皆で「すごいすごい!」って言い合える文化がおもしろいなと思ってるなか、「あれ?なんかおもしろい女の子いるな」と気になったのがちゃんとくさん(笑)。

ちゃんとく そうですね、そのころはたぶん「貧乏IoT」とかやっていたかな。BOCCO(※コミュニケーションロボット)が買えないから(自分で)BOCCOをつくったり。でもLチカしかできなかったですけど(笑)。

水田 そうだったんですね(笑)

ちゃんとく そのときは、「やろうと思ったんですけどだめでしたー。次回、解決策求む」みたいな感じでした。そうやって(周囲から)アドバイスをもらって成長してこれて、それが楽しいんですよね。

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2人が気になるテクノロジー。スマートスピーカーとまごチャンネル。

――そんなちゃんとくさんは、今はどういうことに興味があるんですか?

ちゃんとく スマートスピーカーはまだまだ伸びしろがありそうです。Amazon EchoとかGoogle Homeは海外では日常に馴染んでるんですけど、日本は音声で命令する文化がないから、そのままの状態だと馴染まないんです。

水田 今のスマートスピーカーって、命令をしたとか、なにかのトリガーを引いたら発話するとか、一方向のコミュニケーションになっていると思うんですよね。
対話エンジンが今後発達してくると、LINE Clovaが持たせている(キャラクターの)個性みたいなものがより活きてきて、たとえば本当にドラえもんと話しているんじゃないかと錯覚するくらいの没入感が生まれてくるのかなって感じますね。

ちゃんとく スマートスピーカーのハッカソン(VoiceUIを使ったハッカソン)で出てくるアイデアを見ていても、「今までの日常を楽に置き換える」と「新しい動作を付け加える」といった2つの方向性があるように思います。
たとえば、料理しながらレシピを見なきゃいけなかったのが、「次は~を入れる」と声でレシピを教えてくれる。ちょっと楽になるね、ってアイデアが前者の方向性。他方、後者の新しい動作を付け加えるような画期的なアイデアって、生まれたときのパワーってすごいんですよ。

「逆えかきうた」っていうアイデアがあったんですが、Amazon Echoに歌を歌ってもらって、どんな絵ができるかな、って(描かせる)。で、答え合わせしてみる遊びです。スマホの画面では実現できない、声を使う、という特性を活かした新しいサービス。
「わぁ、そういうのできるんだ、新しい遊びが1つ生まれたよ!!」って、すごい感動しましたね。

このままスマートスピーカー関連のハッカソンイベントをやり続けていけば、日本発のいいアイデアが出てくるかもしれない、って期待しています

――水田さんにとって、おもしろいIoTのテクノロジーってなんでしょうか?

水田 私がこだわるポイントでいうと、モノとインターネットが交わることで今まで人間がしていた行動が変わることとか、より便利になることがあるのかなって思ってて。

とくに、スマホがなくてもできることってあるんじゃないか、という点をすごく意識するんです。スマホにIoT機器を登録して使うというのが、不要なアクションなんじゃないかなって気がして。
子どもとかおばあさんが使うことも考えられるのに、スマホを介さないと使えないというのは、すごくリテラシーを要求されて大変だなって思うんです。

家にいながらディスプレイを見なくてもできるような、新しいインタラクションやユーザーエクスペリエンスが今後生まれるんじゃないかって考えています。
たとえば、その人がどこにいるか、誰といるか、環境音をマイクで拾って次の行動をつくり出す。「音」というのはIoT技術のこれからの注目ポイントかなと思っています。

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ちゃんとく そういうふうにナチュラルな溶け込み方をするとよいですよね。 スマートウォッチとか目覚まし時計とかベッドとか、身の回りのものがだんだんとネットワークにつながっていて、なんとなくフィードバックで改善してたりして、気づかないうちに生活に溶け込んでいくと素敵なんじゃないかなと思います。

水田 具体的にすごく魅力的だなという製品が1つあって。それは「まごチャンネル」なんですよね。「まごチャンネル」が出たとき、こう稲妻が走ったというか。

リテラシーが異なる2つの層をつなぐデバイスってすごいなって思ったんですよね。
おばあちゃん側は、テレビをつけるような感覚でチャンネルを変えれば、孫や息子のスマホから送られてきた写真を見ることができる。
インターネットの端と端にいる人が異なるデバイスで使うことを想定して、しかもリテラシーが違う前提でつくられるサービスって、IoTの理想的な姿かなって思います。
おウチ型の受信機にぽっとライトがついて、「あ、写真が届いてるんだ」って思って、あとはチャンネルオンするだけ、っていうのが素晴らしいなと。

まごチャンネル

Maker Faireから始まったIoTへの興味

――世界各地で開催されるモノづくりのイベント、Maker Faire。水田さんはそれがIoTにハマるきっかけだったんですよね。

水田 インターネットサービスは人の生活を豊かに便利にするので大好きなんですけど、デバイスが変わってもヤフーがやってることは同じだなぁって感じてたんですね。もっとなんかできるんじゃないかって感じていた2013年に、ニューヨークで開催されたMaker Faireのフラッグシップとも言える「Maker Faire New York」にひとりでフラッと行っちゃったんです(笑)

ちゃんとく 東京で開催されているMaker Faire Tokyoを見たことはなかったんですか?

水田 Maker Faire Tokyoに行ったことはあったんですけど、そのときに本場を見てみたいという衝動が沸いて。そうして行ってみたら、小学生からおばあさんやおじいさんまでものづくりしていたんですよね。それを見て、あれ、なんかつくるって楽しそうだな、ってそのときに強く感じました。

で、2017年からは、Maker Faire Tokyoに有志によるサークル活動として「抽象的電子工作」という名前で出展するようになりました。(抽象的な)ユーザーエクスペリエンスから逆算して、IoTの作品アイデアを出してみよう、というグループ活動です。

ちゃんとく 「Tabe/g(タベグラム)」という作品が印象的でした。

MFTで展示されたTabe/g(タベグラム)

水田 インターネットに接続しているコースター型デバイスに茶碗を乗せるだけで、毎日のご飯の量を記録・分析してくれるサービスです。(このままの生活を続けると)「将来太っちゃうよ」とか「痩せちゃうよ」というように、ミラー型デバイスを介して自分の未来の姿を表示してくれます。
毎日ご飯を食べるというシンプルな行動から、ナチュラルに将来の健康を意識できる、みたいなものが生まれるといいなあという思いをこめてつくった作品です。

二人の今後のビジョン

――お二人はこれからどういった感じでやっていこうと考えているんですか?

ちゃんとく IoTを個人で開発するときに許される雑さっていうのを推していきたいですね。仕事じゃないから、なんでもいい。みたいな(笑)

水田 仕事だと生み出しづらいものが、ハッカソンや個人活動ではやれるというのはありますね。まずやってみて投げかけてみると、思った以上の反響ってないですか?意外とウケたとか、触ってくれた人が「欲しい!」って言ってくれたとか。「もっと新しいモノを生み出せる」っていう気持ちになれる。

会社ではヤフーの技術ブランディングというお仕事をしてるんですけど、イノベーションを起こしていきたいという意味合いを込めて、ヤフーの中でMake部っていう活動もしています。

ちゃんとく 私は、もっと世界の違うまったくパソコン触ったことない人にリーチして「ものづくりって楽しいよね」「だからやってみようよ」というところを進めたいなって考えています。私がもともとそうなんですけど、エンジニアではなく、ハードウェアを全然触らな立場だからこそ伝えられることっていっぱいある。日常生活の課題に置き換えたりして、できるだけやわらかい言葉でテクノロジーを伝えるのは得意なほうかな、って思っています。

水田 私も自分のライフワークというか、長い目で見たときにやりたいのが、「テクノロジーのソフト・ランディング」って私は言っているんですけど、わかりづらかったり難しい先端技術であってもよりいろいろな層の人に届けたいって。

以前、ドローンのTelloを買って実家に持って帰ったんですよ。「ドローン飛ばしてみる?」っていって簡単に操作して飛ばしているのを見せると、「やってみたい」「やってみたい」って。
結果、3歳から80歳までみんなドローンを知る立場になったんですよね。ニュースでしか見たこと無いようなテクノロジーをいろいろな層に広げる媒体役みたいなのはとても大事。世代や職種を飛び越えながら広めるというのは大事だなって共感しました。

ちゃんとく そうですよね。でも親にいつも、「なんの仕事してるんだっけ?」って言われるんですけど、うまく答えられないんですよねぇ(笑)

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IoTというテクノロジーを身近な生活にナチュラルに溶け込ませる。今までIoTには無縁だった普通の人々にものづくりの楽しさを広めていく。
IoTのある豊かな社会を実現するためには、そんなビジョンがより大事になっていくのではないでしょうか。おふたりの今後の活躍が楽しみです。

文:菊地 仁

通信会社勤務。2014年より2018年2月まで米国シリコンバレーオフィスにてスタートアップ各社との協業など、事業開発・商品開発業務に従事。趣味はIoT開発ボードの収集だが、日本に戻ってからは時間を確保できないのが悩み。

写真:山﨑悠次

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