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池澤あやかさん「IoTの世界はまだまだ閉じている」──スマートライフを創造する女性パネリスト5人がIoTを本音で語る

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官民協力でIoTやAIを活用したプロジェクトを発掘し、企業間連携や資金・規制面でのサポートに取り組むIoT推進ラボと経済産業省が9月18日、「スマートライフ」をテーマにしたイベントを、新宿で開催しました。

この記事では、講演プログラムの一つである「パネルディスカッション -生活に寄り添ってスマートライフを考える-」のレポートをお届けします。

パネリストは、マイクロソフトのエンジニアであり漫画家でもある千代田まどかさん(以下、ニックネームの「ちょまど」さん)、家事代行サービスを提供するタスカジの和田幸子(わだ・さちこ)代表取締役 、tsumug(ツムグ)の牧田恵里(まきた・えり)代表取締役、タレント兼tsumugエンジニアの池澤あやかさんです。モデレーターはDMM.make AKIBAコミュニティ・マネージャーの上村遥子(かみむら・ようこ)さんが務めます。

DMM.make AKIBAでつながる3人

ハードウェア開発をサポートする総合モノづくり施設「DMM.make AKIBA」のコミュニティ・マネージャーを務める上村さんは、仕事柄、牧田さん、池澤さんとの交流があるそうです。

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DMM.make AKIBAコミュニティ・マネージャーの上村遥子さん

DMM.make AKIBAは秋葉原の富士ソフト秋葉原ビルにあり、tsumugの東京BASEも同じビルにあるなど、多くのハードウェアスタートアップがここに集まっています。利用者同士が気軽に話せる環境のようで、池澤さんは「DMM.make AKIBAにいたらスカウトされたんです」と、牧田さんから勧誘されたことを明かします。

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tsumugのエンジニアで、タレントとしても活動する池澤あやかさん

牧田さんが経営するtsumugでは、コネクティッドロック「TiNK(ティンク)シリーズ」を開発しています。

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tsumugが開発する「TiNK C」の室内機(写真左)と室外機(右)

TiNKは単体でLTE通信機能を持ち、鍵へのアクセス権(解錠/施錠の権限)をインターネットを介してシェアやコントロールできることが特徴です。一般的にスマートフォンから鍵の管理ができるプロダクトのことを「スマートロック」と呼びますが、鍵がさまざまなサービスと連携して生活を便利にすることを目指して「コネクティッド・ロック」として開発を進めています。

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tsumug代表取締役の牧田恵里さん

また、tsumugでは、正社員ゼロの体制で活動しており、社長と取締役4人以外は、業務委託かアルバイトという構成。各部門のオフィサー(責任者)に予算と権限を渡して、それぞれの領域で仕事をしてもらっているという会社です。

tsumugでエンジニアとして働く池澤さんはタレントとして活動していて、社員ではなく、TiNKのコンセプトに共感して業務委託として参画しているメンバーです。
情報番組や報道番組などへの出演の他、メディアでテクノロジー系の記事執筆なども手掛けています。割合としてはエンジニアが半分、残りの半分がタレントや執筆活動とのことです。

「自分の絵を公開するためにWebを学んだ」エンジニア兼漫画家のちょまどさん

キャラクター性という面でこの日一番興味深かったのがちょまどさんです。ニックネームの「ちょまど」の由来は、本名の「千代田まどか(ちよだ・まどか)」の略とのこと。

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マイクロソフトのエンジニア兼漫画家のちょまどさん

大学は英文科ながら、新卒で大手SIerにシステムエンジニア(SE)として入社。ところが3ヶ月で辞め、ベンチャー企業に転職しました。並行して副業で漫画家もスタート。プログラミングを題材にした漫画を描いていたことがきっかけで、当時日本マイクロソフトに務めていた砂金信一郎(いさご・しんいちろう)さん(現在はLINE勤務)の目に留まり、マイクロソフトに入社し、エンジニアとして活躍しています。

大学入学祝いとして親からお絵かきセットのペンタブを買ってもらったことが、ちょまどさんのエンジニアへの道に繋がっています。当時は描いた絵をネットで公開する手段が乏しく、自分でWebサイトを立ち上げることにして、サーバーを立ててサイト作りを始め、掲示板も持ちたくてphpに手を付け、Web周りの技術を身につけて、今に至ったそうです。

「家事と育児でチャレンジングな仕事をしにくくなった」タスカジ和田さん

和田さんは他の3人とは異なるキャリアを歩んでいます。

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タスカジ代表取締役社長の和田幸子さん

2013年、家事代行のマッチングサービス「タスカジ」を立ち上げて起業した和田さんですが、前職はSEで長時間労働だったそうです。SE時代、仕事自体は楽しかったものの結婚・出産とプライベートでの変化もあり、仕事だけでなく家事や育児にも忙しい日々を送っていましたが、家事の負担が重く仕事でチャレンジングなことを手掛ける気力がなくなってしまっていました。

当時は仕事をしながらも「あ、バターが切れていた」とか「もやし炒めを作っておかないと」など、家事のことが頭に浮かんでしまい、仕事と家事が頭の中に混在した状況が辛かったそうです。

そのような状況のなかで家事を外部の人に代行してもらいたいと感じつつも、その仕組みがないことに気付いたことが、自ら家事代行プラットフォームのタスカジを立ち上げるきっかけとなりました。

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家事代行サービス「タスカジ」

トイレ、広告、物理鍵......女性目線、消費者目線で不便だと思うこと

こうした様々な背景をもつ5人の登壇者がさまざまな角度からIoTについてディスカッションを行いました。

最初のトークテーマは、「日常で、不便だと感じること」。ちょまどさんが最初に挙げたのは「トイレ」です。女性用トイレが混むことに不満を感じるといいます。ところが場所が変われば逆に男性用トイレが混んでいるシーンに遭遇するといいます。スーパーなど女性が多い場所では女性用トイレが混む一方で、技術的な勉強会などに行くと女性用トイレは空いていて男性用トイレが混んでいるのです。最近はインターネットで公衆トイレの空き情報を見ることができるサービスに便利さを感じているそうです。


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広告への不満もあるといいます。「電車に乗っている時とか、興味のない広告がいっぱいあるんです。ゴルフとかマンションの広告を出されても、ほへぇ〜って感じだし」

ちょまどさんは顔写真/映像を含めて個人情報を見られてもいいので自分が興味を持ちそうな広告や情報を自動的に掲示して欲しいそうです。「自分もハッピー、広告主もハッピー、皆ハッピー」(ちょまどさん)。Webではすでにそうなっていますが、リアルの世界では違います。ただ池澤さんによると、「タクシーはすでにそんな感じになっていますよ」とのこと。ちょまどさんも驚いていましたし、筆者も含め会場からもポツポツと驚きの声が聞こえます。

tsumugが手掛けるTiNKに話が移ると、牧田さんが元彼による鍵の無断コピーと不法侵入に端を発したトラブルや不便さについて話しました。

TiNK誕生のきっかけは、牧田さんの部屋の合鍵を元彼が無断でコピーして不法侵入したことだそうです。この話を聞いたちょまどさんは「ヤバイヤバイ」と驚愕していましたが、会場全体も同じで、一気に話に前のめりになりました。

当時牧田さんは、自宅のカウンターにレシートを置いていたそうですが、なぜか少しずつ減っていくことに気付き、違和感を覚えていたといいます。合鍵を持っているのは母親と妹だけで、聞いてみても「勘違いじゃないの?」と言われ、不毛な親子喧嘩に発展することもあったようです。元彼が勝手に鍵をコピーしているなんて発想はなく、解決しようのない、出口のない気持ち悪さを抱えていたようです。パネリスト一同も「怖っ……」と元彼の行動に引いていました。

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牧田さんはそんな体験も「テクノロジーで解消できる」のではと考えてTiNKの開発に着手しました。

独自仕様で不便に……IoTの「閉じた世界」に不満

池澤さんはIoT製品を色々と購入する中で、メーカーごとに閉じた世界に不満を感じるそうです。これはIoT製品のユーザーほぼ全員が感じる事かもしれません。

IoT製品には様々な規格があり、必ずしも製品間での連携ができるわけではありません。ある製品は家のWi-Fiにつながるけど、ある製品はつながらずにBluetoothだけ、LTEだけなど、ネットワークという面だけみても統一性が見られません。

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牧田さんは、tsumugのオフィスにある家電製品でも同様の問題があったと話します。「ココロエンジン」搭載のシャープ製冷蔵庫、電子レンジ、空気清浄機をオフィスに置いているものの、Wi-Fiルーターに繋げることができず不便さを感じたそうです。「Androidを使っていて普通のルーターに繋がらないってどういうこと?」と。

「何か束縛されているような、縛られている感じがしますよね」と池澤さん。

池澤さんは部屋の照明をIoT化しようとした際にも、ソケットの形式が異なることで目的の製品を使えなかったことがあるそうです。

ハードウェアに関してはソフトウェア以上に規格に縛られている面があります。「ITの場合、プラットフォームをオープンにしてAPIを開放することで、様々な企業から多様なサービスが提供されるようになってきました。一方ハードウェアでは昔ながらの作り方、取引先、ルールに縛られているように思います」と、上村さんは問題点を指摘します。

ハードウェアは物理的なモノである以上、形のないITと比べると必然的に縛りが多くなってしまうのは確かでしょう。


文・写真:長田卓也 

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