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数年前はギャグだったロボットビジネス、日本らしいユニークさが世界で評価ーーユカイ工学・青木俊介


「世界の認識が変わったことで僕たちもロボットをビジネスにすることができましたし、自分たちの目指す方向、解くべき問題がようやく見えて来た」(ユカイ工学CEO・青木俊介さん)

MIJSコンソーシアム主催のMeet Upコミュニティ「meet ALIVE」の第1回トークイベント「スタートアップのトップに聞く“世界で勝っていくための作戦”」が5月24日、都内で開催されました。

パネリストは、ユカイ工学の青木俊介CEO、教育ベンチャー・ライフイズテックを率いる水野雄介代表取締役CEO、tsumug(ツムグ)の牧田恵里代表取締役社長の3人。モデレーターは日本マイクロソフトでエバンジェリストを務める西脇資哲(にしわき・もとあき)さんです。本記事では青木さんのコメントを抜粋して紹介します。(以下、敬称略)

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ユカイ工学の青木俊介さん

「2025年には一家に一台ロボットを」

青木:ユカイ工学CEOの青木俊介です。ちょっと変わった、かわいらしいロボットをたくさん作っています。また、他の企業のロボット開発のお手伝いもしています。2025年までに一家に一台ロボットを普及させることを目指して、20人くらいでやっています。

学生時代にチームラボという会社の創業に携わり、CTOを7年間務めました。その後、ロボットを作りたいと思って会社を辞めたんですが、ロボットでマネタイズをするのもなかなか難しく、友人がやっていたピクシブという会社でCTOを3年間務めました。平日にピクシブで働きながら、週末に後輩の学生を集めてロボットを作り始めて、独立したのが7年前です。

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ユカイ工学のロボット

青木:スライドの右上にあるロボットは「BOCCO(ボッコ)」という名前で、いろんなセンサーを搭載しています。例えば両親が共働きで子供が鍵っ子の家で、子供が帰宅したことをBOCCOが検知して親が確認できるとか、おじいちゃんおばあちゃんが1人暮らしの家に置いておくと生活を見守ることができて、ロボットを通したコミュニケーションができるとか、そういったロボットです。東京ガス、大和ハウスなどでの実証実験が始まっていて、徐々に広がってきています。

しっぽのついたクッション型ロボット「Qoobo」

スライドの下にあるのが今日持って来た「Qoobo(クーボ)」というロボットです。なで方に応じてしっぽの動きが変わります。ゆっくりなでるとしっぽは振れるだけですが、ワシャワシャすると、ちょっと興奮してくるんです。

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Qooboを抱える青木さん

青木:ペットを飼えないアパートに住んでいる人や、1人暮らしで犬の散歩に行けない人、猫アレルギーの人などに良いと思います。高齢者向けの施設に住んでいる人もペットを飼えないので、これを持って行くと非常に喜んでもらえます。

昨年10月に発表して、世界的にもかなり話題になりました。クラウドファンディングサイト「Kickstarter」で資金を集めまして、今年の10月頃に本格的に販売する予定です。

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Qooboのお尻と尻尾

西脇:これ、充電はどうするんですか?

青木:充電はUSBで、お尻の辺りに挿すところがあります。

西脇:電池はどれくらい持つんでしょうか?

青木:8時間持つ設計になっています。

週末に学生たちと始めたロボット作り

西脇:ロボットを作るにはものすごくお金がかかると思いますが、どうやって作っているんですか?

青木:そもそも最初はウィークエンドプロジェクトで始めたんです。

西脇:週末の楽しみとして?

青木:楽しみというか、ロボットを作りたい、ロボットで起業したいという思いはもともとあったので、いろんな補助金に応募して、そのお金で後輩の学生たちと開発をしました。

西脇:具体的にはどんな補助金をもらったんですか?

青木:僕がもらったのはIPA(独立行政法人情報処理推進機構)の未踏事業(が採択したプロジェクト)の予算です。

西脇:ロボット界隈では未踏でもらってる人が多いですね。

青木:最近増えてきましたね。2009年だったかな、大阪大学大学院の有名な石黒浩(いしぐろ・ひろし)先生( 基礎工学研究科システム創成専攻教授)が未踏のプロジェクトマネージャーになったんです。その頃から急激にロボットのテーマが増えたと思います。私のチームは石黒先生の教え子第1号プロジェクトのようなものになると思います。

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西脇:なるほど。ですが、その後も資金を調達し続けないとロボットを作っていけませんよね?

青木:僕たちが最初に作ったのは目玉おやじロボットという、腕に目玉をつけるロボットだったんです。完全に鬼太郎インスパイアのロボットです。

西脇:それは(権利的に)大丈夫だったんですか?

青木:それが、水木プロダクションとコラボすることができまして!

西脇:悪い方向には進まなかったんですね。

青木:はい。鳥取県の水木しげる記念館で、アトラクションとして何ヶ月間か運用しました。来場者の方に着けてもらい、ロボットが「妖怪がいるぞ」って動きをした所をスマホで撮影すると妖怪が写るんです。

西脇:なるほど。水木さんとご一緒することでプロジェクトがうまく進みますね。

青木:はい。それで少しずつ話題になったり、いくばくかのお金ももらいながら、ある程度の実績ができるとまた別のお話が来て、と少しずつ大きくしていきました。

ロボット開発資金はあえて海外のクラウドファンディング「Kickstarter」で調達

西脇:今日お持ちになっているQoobo。これはKickstarterでの資金調達ですよね?

青木:はい。

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しっぽのついたクッション型セラピーロボットQoobo

西脇:Kickstarterを実際にやってみていかがですか?

青木:僕たちがKickstarterを使うのは2回目ですが、日本人のプロジェクトはなかなか話題にならず、大きな金額になりづらいというのはあります。ですが、昨年9月にKickstarterは日本にもオフィスを出していて、日本からのプロジェクトを支援する体制も少しずつ良くなっていると思います。

西脇:日本だとクラウドファンディングは他にも数社有名どころがあると思いますが、そちらはどうですか?

青木:その方が国内では目立つので、やはり国内での支援者集めはしやすいと思います。

西脇:あえてKickstarterを選ばれた理由というのは?

青木:過去に1回Kickstarterを使って本部の人ともつながりがあったことと、日本発で海外に挑戦したいと思ったことです。ちょうど今回のイベントのテーマでもありますね。

製品動画がきっかけで、アメリカのテレビ出演

西脇:青木さんはこの商品を世界に売り込むためにどういったことをしていますか?

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青木:まず動画には力を入れてきれいなものを作っています。今の時代、動画がなしで製品を広めるのは難しいので。最初に発表したYouTubeの動画がバイラルメディアでかなり広がって、世界中のメディアで紹介してもらったんです。海外のメディアからたくさん問い合わせが来て、アメリカのテレビ番組でも紹介されました。

西脇:青木さんも出演されたんですか?

青木:私も何回か出ました。アメリカの老人ホームを訪ねておばあちゃんに触ってもらおう! みたいな企画をやりました。やはりペットは飼えないみたいで、おばあちゃん達が「This is cool!」ってノリノリでした。

西脇:その辺は日本とは違いますか?

青木:クールまでは言わないですが、日本でも結構喜んでもらえました。ただ、反応は日本人とアメリカ人で違います。日本だと、ほとんどの人が「かわいいいねぇ」って言いますが、アメリカだと4分の1くらいの人は「顔がないと嫌」と言いますね。

「日本人には普通でも海外だとユニークなものがたくさんある」ーー海外進出に大切なのは?

西脇:青木さんはすでに海外へ製品を展開していますが、日本企業が海外進出するために大切なことは何だと考えますか?

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青木:「日本らしいユニークなモノ」です。僕たちが製品を海外の展示会に持っていくと「This is very Japanese!」みたいなことを言われます。自分たちではそれほど意識していなくても海外に持って行くと実はユニークだという物はいっぱいあると思います。そういう良さを上手く出せれば世界でも戦えるんじゃないかなと。

例えば、海外で一番人気があるゲーム機はNintendo Switchだという話を聞いたことがあります。僕自身、任天堂がすごく好きで、ニューヨークのNintendo World Storeにも何回か行ったことがあります。日本人はまったくいませんが「お前、東京から来たのか!」とか「日本人に会えて嬉しい!」とみんな喜んでくれますし、アメリカでは大人も子供もマリオのグッズを買っています。そういうのを見ていても、日本らしいユニークなものが受けるんだろうと思います。

西脇:日本のユニークなものって強いですよね。

アメリカでタレント活動もしていた日本人経営者ーー尊敬する経営者は?

西脇:さて次の質問です。青木さんが尊敬する経営者はどなたでしょうか?

青木:ソニー創業者の盛田昭夫(もりた・あきお)さんです。盛田さんの映像はYouTubeに古いものがいっぱいあって、それがカッコいいんですよ!

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ライフイズテックの水野さん(写真左)も同じ答え

西脇:具体的にどんなところでしょう?

青木:まずすごいのは、日本人なのにアメリカン・エキスプレスのCMに出ていることですね。

西脇:確かに。

青木:普通にアメリカでタレント活動しているんです。夜の番組でも盛田さんコーナーがあって、当時は日本の技術もすごかったので、「こんなに小さいカセットでビデオを撮れるんだよ」と毎週製品を紹介して、みんながどよめくみたいな番組です。英語は決して上手くはないんですけど、製品がすごいのでみんなちゃんと聞くんですよ。

西脇:ぶっちゃけ、少し前のスティーブ・ジョブズがやっていたのはこれと同じだと思うんです。盛田さんが昔やってたよ、と。

青木:ホントそうですよね。

「Pepperはロボット産業のビジョンを示してくれた」ーー現在の到達度は何%?

西脇:では、今の青木さんから見て、自身の会社はゴールに対して何%くらいまで到達していると思いますか?

青木:僕たちはロボットの会社ですが、そもそも世の中がロボットについて取り上げ出したのはここ4年くらい、「Pepper」が出てきてからくらいなんです。Pepperが出る前に僕がビジネスでロボットを作りたいと言っても、みんなギャグとしか思ってくれませんでした。

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西脇:Pepperは世界を変えましたか?

青木:Pepperは世界の認識を変えた、ビジョンを示したと思います。世界の認識が変わったことで僕たちもロボットをビジネスにすることができましたし、自分たちの目指す方向、解くべき問題がようやく見えて来たかなという段階です。

西脇:まだまだ、だと。

青木:はい。

西脇:残りのパーセントを埋めるためにどんな人材が欲しいですか?

青木:「半端なく売れるセールスマン」です!

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西脇:やっぱりそこですよね。お金に変えてくれないとね(笑)

青木:はい。もう日本だけじゃなくて世界で売ってくれる人ですね。

西脇:MIJSは優秀なセールスマンが多いですから、ぜひアプローチしてみてください!


文:長田卓也 

同じくパネリストの牧田恵里さんの記事はこちら

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