「つくる人」と「つかう人」のこだわりを追求する

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会社の成長とともに感じる「お金を使いたいことが尽きない幸せ」ーーtsumug・牧田恵里


「お金を使いたいことがこんなに生まれてくるということが、初めての体験だったんです」(tsumug代表取締役社長・牧田恵里さん)

MIJSコンソーシアム主催のMeet Upコミュニティ「meet ALIVE」の第1回トークイベント「スタートアップのトップに聞く“世界で勝っていくための作戦”」が5月24日、都内で開催されました。

パネリストは、ユカイ工学の青木俊介CEO、教育ベンチャー・ライフイズテックを率いる水野雄介代表取締役CEO、tsumug(ツムグ)の牧田恵里代表取締役社長の3人。モデレーターは日本マイクロソフトでエバンジェリストを務める西脇資哲(にしわき・もとあき)さんです。本記事では牧田さんのコメントを抜粋して紹介します。(以下、敬称略)

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tsumugの牧田恵里さん

孫泰蔵さんのもとでスタートアップ支援、その後自らtsumugを創業

牧田:tsumugの牧田です。「ツムグ」と読みます。私自身の起業経験は今2社目、2.5社目みたいな感じ、いや0.5、0.5で1社、tsumugと合わせてトータル2社みたいな感じ。

西脇:結構あやふやなところがあるんですね。

牧田:親の会社を一緒にやっていて、そこは20億の負債をかかえて倒産しました。

西脇:20億で倒産!?

牧田:はい。ですからスタートアップのトップを走ると言ってもらえるほど大層な経験をしているわけではありませんが、スタートアップの創業や、孫泰蔵さんが創業したベンチャーキャピタルのMOVIDA JAPAN(現Mistletoe)でスタートアップの支援もしていました。

牧田:今はtsumugというハードウェアベンチャーを経営していて、20人ほどのメンバーがいます。

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コネクティッド・ロック「TiNK」

牧田:tsumugではコネクティッド・ロック「TiNK(ティンク)」という鍵のデバイスを作っています。TiNKは単体でLTE通信ができる電子錠です。日常でIoTデバイスを使うイメージを持てている方はまだ少ないと思いますが、TiNKを日常で使うイメージ動画を10個ほどYouTubeにアップしているので、興味を持った人はぜひ見てみて下さい。



お金の色が近いパートナーと組みたい

西脇:tsumugの創業以前、2013年からは孫泰蔵さんのベンチャーキャピタルで一緒に仕事をしていたんですよね?

牧田:はい。

西脇:そこで何を学びましたか?

牧田:例えば、お金には色があるということを学びました。

西脇:何色と何色と何色があるんでしょう?

牧田:具体的に何色、というよりはそれぞれ全部に色があるんだと思います。投資する側、される側それぞれに色があって、例えば投資を受けるにしても、ベンチャーキャピタルやCVC(コーポレートベンチャーキャピタル、事業会社によるベンチャー企業への投資)がどの投資領域に支援しているのか、どういう方向にお金を使いたいのかを知った上で、その色を合わせられるといいのかなと思っています。

西脇:いろんな人、用途があって、それを見極めなさいということですね。

牧田:そうですね。それが近しい所とパートナーシップを組めるとワイワイ楽しく仕事をできると思います。

自転車シェア「メルチャリ」の鍵、メルカリと共同開発

西脇:tsumugの鍵がメルチャリに使われているのもその文脈ですね。 メルチャリについて紹介してもらえますか?

牧田:メルチャリは、メルカリの自転車シェアリングサービスで、今は福岡で提供しています。私たちはそのメルチャリの鍵を共同開発しています。

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メルチャリの鍵部分

西脇:どういう縁でメルカリとつながったんでしょうか?

牧田:メルカリは当社の株主でもあるんです。一番最初は、DMM.comのオフィスのオープニングパーティーでメルカリの濱田優貴(はまだ・ゆうき)取締役に「今こんなデバイスを作っているんです」と話をしたことですかね。

西脇:デバイスを自ら紹介しに行ったんですか?

牧田:いえ、雑談です。今何やってるの? みたいな感じで。実は濱田さんは私の大学の後輩でもあります。東京理科大の人ってこの界隈では少ないので。

西脇:同窓生を見つけるとそれだけ盛り上がる?

牧田:そうですね。それで話を聞かせて、と。シェアリングと当社の鍵はすごく相性がいいので。

当社のロゴは着物の「紬(つむぎ)」という漢字からできていますが、そもそも1社でできることは少ないので、いろいろなパートナー企業と縁をつむいで、一緒に何かできればと思っています。

西脇:お互いにメリットのある関係を大事にしていこうということですね。

世界に売り込むために、CESの使い方

西脇:さて、このイベントのテーマでもありますが、牧田さんはTiNKを海外へ売り込むためにどんなことを考えていますか?

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tsumugがCES2018に出店した時の写真

牧田:試しているのがCES(毎年1月、米ラスベガスで開催される世界最大級の家電見本市)で、tsumugはCESに2年連続で出展しています。私はtsumugを始める前から4年連続で参加して、みなさんどんなふうにやっているのかを見ていました。

西脇:CESは勉強になりますよね。

牧田:そうですね。今年はすごく大きなブースを持たせてもらえましたし。メルチャリも持って行ったんですが、入国審査の時に「持ち込むよりこっちで自転車を買った方が安いぜ!」って審査官に言われて。そんなの分かってるんだけど、このロゴが大切なんだよって。

西脇:そうですよね。海外の方の反応はいかがでした?

牧田:すごく良かったです。今年は日本のメディアもCESに注目していて、特にNHK WORLDに出た後は海外からの問い合わせが増えました。

西脇:CESは勉強にもなりますし継続的に出ることに意味があるんですね。

牧田:そうですね。CESは継続して出ると面白いと思います。定点観察もできますし。そういえば、去年はAlexa祭りでしたね。

西脇:Alexaだらけでしたね。

牧田:日本だと、特に数年前まではCESのニュースってモーターショーばりにクルマしか映ってなかったですよね。

西脇:やっぱりモノがあるからですかね。

牧田:クルマの会場は全体の4分の1くらいしかないので、もうちょっといろんなものを映して欲しいですよね。

わずかな質問で商談が決まるスピード感ーー海外進出に大切なのは?

西脇:海外進出を実現させるためには、牧田さんは何が重要だと考えていますか? これが大事だ! これは学んでおけ! これをやっておけ! など重要なキーワードをお願いします。ちなみに私は、重要なことの1つは英語だと言っています。外資系にいるとそれをすごく感じます。ただ、重要なのは英語が上手いかではなく度胸なんです。海外の人は、こちらがたじろいでいる瞬間に「こいつダメだ」と思っちゃうんです。その最初のインプレッションが大事なんですね。その次に技術力や人脈などでしょうか。

牧田:私は「スピード」です。これは重要なことというよりも自分が感銘を受けたことです。海外では、日本のイベントと比べてスピード感が圧倒的に違います。CESではSuites Room Meetingというものがあり、会場内に出展はしてないんですけど、ラスベガスのホテルのSuite Roomを使って、そこでどんどん商談をしていく企業がありました

西脇:そこで契約も決まっちゃうんですよね。

牧田:そうなんですよ。CESにはメーカー、通信キャリアとか世界中のVIPが来ていて、その場で決裁できる人も多いので、4つ、5つくらいの質問で商談が決まっていきます。このスピード感に勝たなければいけないとなったら、自分のマインドから変えていく必要があると感じました。

西脇:今牧田さんが話したように、CESではサイドミーティングエリアがたくさんあって、代理店契約、サプライヤー契約などが決まっていくんです。その場で数量をコミットすれば契約するよ、と。実はCESはサプライヤーの契約の場なんですよね。だからアジア勢も契約にすごく躍起になっている。その点でやはり日本は負けている気がします。

「社長なのにイベントの受付にいる」人ーー尊敬する経営者は?

西脇:それでは次の質問に行きましょう。牧田さんの尊敬する経営者を教えてください。

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牧田:私は、さくらインターネットの田中邦裕(たなか・くにひろ)社長です。

西脇:ちょっと意外です。田中社長は素晴らしい方ですが、もっとスター的な方を挙げるかと思いました。

牧田:スター的な方だと私はちょっと。スター過ぎちゃうんで。田中社長は実際にお話をしている方でもあるので。田中社長は18歳から今の会社をやっていて、インターネットの変遷をずっと見てきた起業家の1人なのに、まったくおごらず偉ぶらない。例えば、自社イベントでは、登壇者なのに扉を開けていたり、社長なのに受付に座っていたりします。常に謙虚ですし、同じ目線で話してくれます。

西脇:実際に会ってアドバイスをもらうこともあるんですか?

牧田:アドバイスをもらうこともありますし、一緒に考えてくれることもあります。どんな立場になっても、初心というか、そうした気持ちを持っていたいということを常に頭の中に残してくれる方です。

西脇:初心忘るべからずということですね。マイクロソフトの前、日本オラクルに勤めていた時代から私も田中社長は知っていますが、とても丁寧で素晴らしい経営者ですよね。

「お金を使いたいことが次々に出てくる」ーー現在の到達度は何%?

西脇:牧田さんが自身の会社を評価した時、自分が描いているゴールに対して何%くらいまで到達していると思いますか? 牧田さんは8%と書いていますが、その理由は?

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牧田:TiNKという製品についてだけでもまだ8%だと思っています。やりたいことはその先にあるので。完全に自分の会社というのはtsumugが初めてですが、正直な話、こんなにいっぱいお金を使えるとは思っていなかったんです。お金を使いたいことがこんなに生まれてくるということが、初めての体験だったんです。

西脇:そうなると、もっとやりたくなるんですよね。

牧田:お金を使うのはすごく難しいことだと思っていましたが、こんなにも使いたいと思えることがあるのは幸せだと感じています。

西脇:牧田さんのお話は一貫していますよね。お金には色があるというお話から、投資はお互いの利益がある人と、そしてそのお金をこんなにも使えることがある、ということから会社が無限に広がっていくと。残りのパーセントを埋めるためにはどういう人材が必要でしょうか?

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牧田:フェーズにもよると思いますが、私は固定概念を捨て切れる人です。これは自分もトライしていますが、すごく難しいです。自分が過去にどういう体験をしてきたか、どんな成功体験があったか、そういうことにとらわれずに今の事業を考える、新しく取り組むことって難しいですよね。若い人もご年配の人でもこれをやれる人が強く、どんなものでも作れるんだと思います。

西脇:なるほど。そんな人材が集まるといいですね。


文:長田卓也 

同じくパネリストの青木俊介さんの記事はこちら

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