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家入氏らがテクノロジーの“個人の力”を強調、今は「インターネット黎明期と似ている」:第4回TORYUMON

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NOW代表、CAMPFIRE代表取締役社長の家入一真さん
スタートアップを目指す福岡の学生たちのコミュニティとして定着しつつあるイベント「TORYUMON」。起業を目指す若者たちと起業家やベンチャーキャピタルが交流し、ピッチを通じて事業の立ち上げに近づく貴重な機会になっています。

そのTORYUMONの第4回が、2018年10月8日(土)に開催されました。前日に大型で強い台風25号が福岡に接近し、一時は開催そのものが危ぶまれましたが、参加者の熱い想いもあってか台風の影響は少なく、スタート時間を1時間遅らせて始まりました。

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tsumugの小笠原治取締役

「トップランナー達が見ている未来とは」と題されたメインセッションには、ベンチャーキャピタルのNOW代表で、クラウドファンディングプラットフォーム CAMPFIRE代表取締役社長の家入一真(いえいり・かずま)さんと、メルカリの研究開発組織「mercari R4D」のシニアフェローも務めるtsumug(ツムグ)取締役の小笠原 治(おがさはら・おさむ)さんが登壇しました。小笠原さんは、台風の影響で新幹線がストップして登壇できなくなったメルカリの小泉文明(こいずみ・ふみあき)取締役社長に代わるピンチヒッターです。モデレーターは、シードアクセラレータプログラム「StarBurst(スターバースト)」を運営するプロトスターの栗島祐介(くりしま・ゆうすけ)代表取締役CCOが務めました。

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モデレーターを務めたプロトスターの栗島 祐介代表取締役CCO

メルカリでさえ、一発での成功に確信はなかった

栗島さんが家入さんと小笠原さんに最初に投げかけた質問は「どんな未来を想像して今関わっているサービスを展開しているのか」ということでした。

まず、家入さんが創業当初のメルカリを例に出して語ります。

「メルカリって最初からフリマアプリに絞っていたわけじゃないですよね。立ち上げ当時はいくつかサービスをやってみようくらいの感じだったはず。実際もともとの会社名はコウゾウっていう抽象的な名前でした。一番最初に立ち上げたメルカリが成功したから今はそれが社名になっているけど。山田さんですらメルカリの立ち上げ時は不安で、一発目でうまくいくとは思っていなかった。これはすごく希望の持てる話だと思うんです」(家入さん)

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インターネット黎明期と今の相似性

家入さんが2001年、21歳で最初に立ち上げた会社は、レンタルサーバサービスなどを手がけるpaperboy & co.(現GMOペパボ)でした。当時なぜレンタルサーバがうまくいくと思ったのでしょうか。

「僕がインターネットに初めて触れたのは19歳とか20歳のころで、そのころはインターネット黎明期と呼ばれる時代。そもそもインターネットを使っている人が少なかったし、自分でウェブサイトを持っている人なんてもっと少なかったんです。ウェブサイトを作るサービスもあったけど、それは基本的に企業向けのもの。そんなときに自分でウェブサイトを作って、自分が描いていた絵を載せてみたんですよ。その頃僕は絵を勉強していたので。すると僕のウェブサイトを見た知らない人から絵の感想が掲示板に書き込まれたんです。海外の人からコメントをもらえたりした。当時福岡でギャラリーを借りて個展をやろうとすると10万円くらいかかったはずなんです。でもインターネットを使うとほとんど無料でできちゃった。しかも福岡県外どころか世界中に対して発信できる。この経験でインターネットに自己表現の場としての可能性を感じて、今後自己表現をする人が増えていくだろうなと考えたのが、ロリポップというレンタルサーバサービスを思いついたきっかけです」(家入さん)

「今の仮想通貨とかxR(VRやAR、MRなどの技術をまとめた呼称)を巡る動きって、20年前のインターネット黎明期とかぶることが多いですよね。絵の個展の場所がギャラリーからインターネットに流れていったように、VR空間で自分の美術館を作って、仮想通貨で自分の絵を買ってもらうなんてことが近いうちにできるようになるんじゃないかな」(小笠原さん)

家入さん「未来は常に個人のもとにある」

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どんな未来が来るのかを考える上で、テクノロジーの観点は欠かせません。ではテクノロジーが主導する現代社会で、私たちはどのようにテクノロジーと接していくべきなのでしょうか。家入さんは、テクノロジーの本質は民主化にあると述べます。

「時代が進むにつれて、かつて人間が当たり前にやっていたことが複雑化していきました。その複雑になってしまったことを実現するしくみを整えていった結果、そういうものがいつのまにか自分たちの手を離れたところに行ってしまった。お金がまさにいい例です。最初は物々交換や略奪からスタートしたやりとりが、お金を介すようになったことで中央集権化してしまい、結果としてお金のしくみに個人がアクセスできなくなってしまった。僕は民主化ってその遠くに行ってしまったものを再度個人の手に取り戻す行為だと思っています。小さくてもいいから、テクノロジーを使って個人がお金をコントロールできるしくみを取り戻すことは、個人が力を取り戻すことに繋がります。未来は常に個人のもとにあると思っています」(家入さん)

「テクノロジーを使って目指すべきところがどこかという視点は非常に大事ですよね。例えば中国を見ると、テクノロジーを使った超中央集権化を目指している。資金決済とか自動運転とか、それぞれの分野のテクノロジーやその環境づくりはいいことだし、どんどんやればいいと思う。だけどその先にある目的が中央集権化というのはちょっと相容れないし、怖いですよね。テクノロジーを使って何を目指すのか、その目的が家入さんの言うような個人の自由やエンパワーメントみたいなところにないと、技術が間違った使われ方をしてしまいます」(小笠原さん)

「テクノロジーが究極的に発展すると中央集権化に向かっていくというのは歴史が示していますよね。国境を超えて、肌の色を超えて、言語を超えて人がつながっていく世界を僕らは理想郷として描いていたけど、今はその理想に対する反発や反動がギュッと来てる気がします。一旦インターネットは国に閉じていくのではないかというのが、僕の持論ですね」(家入さん)

急遽、BASEの鶴岡裕太代表取締役CEOとヘイの佐藤裕介代表取締役社長が登壇

ここで、会場に来ていたBASEの鶴岡裕太(つるおか・ゆうた)代表取締役CEOとヘイの佐藤裕介(さとう・ゆうすけ)代表取締役社長が急遽登壇。お2人ともオンラインショップ開設サービスを運営する若手起業家で、起業を目指す学生たちの熱気は更に高まりました。

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注目の起業家が壇上に揃ったことを受けて、栗島さんの発案で急遽セッションは質疑応答に。学生からの率直な質問に対して登壇者もそれを率直に打ち返し、和気あいあいとした雰囲気の中のなかでも聞き入ってしまう内容となりました。ここではその中からいくつかのやり取りをご紹介します。

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BASEの鶴岡裕太代表取締役CEO

質問者1:家入さんに長く支援してもらうにはどうしたらいいですか?

「家入さんにあまり興味がないくらいがちょうどいいですよ。僕はリバ邸渋谷にいたこともあって家入さんとの付き合いは長いんですけど、実は一緒に仕事をしたことはないんです。もちろん出資してもらったり、会社の役員としてお世話にはなっているんですけど。たまたま会うことが多いくらいの適度な距離感がいいかもしれませんね」(鶴岡さん)

「あと家入さんはダメな人が好きですよ(笑)」(小笠原さん)

「でもダメすぎるのはダメですよ(笑)」(家入さん)

怒りや弱みだけで起業するのは少し違う

質問者2:尖っている人の居場所を作りたいと考えています。そのためには、弱さを共有して本音を語り合うことが重要だと思います。僕には小学生の時にいじめられていた経験がありましたが、それを仲間に伝えるとチーム作りがうまく行ったことがあります。ただこれが会社組織となるとうまくいかないようにも思えます。本音を語り合うためにどんな方法があるでしょうか? そのときに気をつけていることはありますか?

「まずは自分から弱さを出すことでしょうね。僕はこんなダメなところがあって……と全部開示してしまう。そこまで話した上でそれでも一緒にチームで頑張ろう、となったら次に進めばいいと思います。どんな人でもそれぞれそれなりに辛かった経験はあるはずだし、劣等感もあるはず。ただそれを単に辛いままに、誰かを恨み続けたり、世界は腐ってるって思い続けるより、その辛さがあったからこそ今これをやれているんだというように転換できるといいですよね」(家入さん)

「家入さんは怒りとか弱みとか、そういうなんらかの原体験をもった人が好きで、それを聞きつけた人がまわりにいっぱい来ているんですけど、ただ怒りや弱みが強すぎるだけだとちょっと違いますよね。暴力的なものは嫌いだし、来られても困ります」(鶴岡さん)

「怒りだけで起業したいといわれても、そこに出資は難しいですよね。それはロジックが違うから」(家入さん)

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ヘイの佐藤裕介代表取締役社長(写真右)

「物事を前に進めていくためには、虚勢を張っても仕方ないですよね。そうじゃなくて、まずは自分にできないことを開示して言ってしまって、その部分ができる人にコミットメントをしてもらうことがかなり重要です。グーグルに勤めていたときに尊敬していた女性の上司がいるんですけど、その人は自己開示が上手くて、助けてもらえるリーダーだったんです。うまく行っているのはチームメンバーのおかげだって言うんですね。ただチームの様子とその中での彼女の姿は、彼女の上司を含めてみんなが見ている。だからリーダーに抜擢されるし、彼女の下で働きたいという人がたくさんいたんです。起業家コミュニティの“行くぜ!”という感じではなく、自分が続けられる形をつくることが大事です」(佐藤さん)

明日すべきことが何なのか、evilなことをやっていないかを考える

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セッションは、起業を目指す学生たちへのメッセージで締められました。家入さんはみんなが自分なりの幸せのものさしを持つこと、そして相手の幸せのものさしを尊重することの重要性を語り、こう続けました。

「起業するとき、なぜこのサービスをやろうとしているのか、それをユーザーや仲間に伝えることが重要です。確かに、儲かりそうだからとか流行りそうだから立ち上げるというのもあるかもしれないけど、それはあくまでも入り口でしかない。サービスを立ち上げてから、『あぁ、あのときの自分はこう考えていたんだなぁ』と気づくこともある。言語化以外の手段でもいいからとにかく本質的に考えて掘り下げること。明日すべきことが何なのかを考えながら行動することです。表に出ない地味な毎日をどれだけ積み重ねられるかが成功のカギだと思います」(家入さん)

小笠原さんは家入さんの話を受けて続けます。

「僕らみたいにこうやって表に出るというのは特殊なことです。表にでても批判されたり、うらやまれたりするばかりであまりいいことはありません。起業も同じで、起業すると辛いことが増えます。家入さんも僕も一時期は借金まみれでした。それでも好きでやりたいことはないかを探してください。そしてそのときはそれが悪ではないかを考えてください。evil(悪)なことをやっていないか、常に問いかけてください」(小笠原さん)

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文:香月啓佑、写真:坂雄貴、香月啓佑

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