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社長との付き合い方、リモートワーク、副業……tsumugのエンジニアどう考えているか?:tsumug Tech Day 1st

物理カギに代わるコネクティッド・ロック「TiNK」シリーズを手がける株式会社tsumug(ツムグ)が2月20日に福岡市で「tsumug Tech Day 1st」を開催。エンジニア向けとしては初めてのイベントでしたが、地元福岡をはじめ各地から定員を大幅に超える80人の参加者が集まりました。この記事ではエンジニア向けのセッションをまとめます。

泣き虫社長とエンジニアの果てなき闘い――「できるよ、金と時間と人次第」

tsumug代表の牧田とエンジニアとしてTiNKの開発に携わってきた青木さんが製品開発の現場事情を説明します。青木さんがtsumugに参画したのは2016年。社内ではTiNKのプロトタイプを製作していた時期でした。

「当時いたエンジニアからは『こんなの無理ですよ。作れません。仕様を変更してください』という声が多かったようで、そんな時に相談したのが当時参画前の青木さんでした。青木さんは『できるよ。時間とお金さえあればなんでも作れる』と言ってもらえて、力になりました」(牧田)

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(写真:集合写真家 武市 真拓 http://hiro.takechi.jp)

その後、青木さんがtsumugに参画することになりましたが、経営者とエンジニアという立場の違いから衝突もかなり多かったようです。

「牧田が言っていることはブレていなくて、やりたいことっていうのは宇宙の彼方くらいまで一緒なんですよ。だけどエンジニアって宇宙の彼方見れなくて、目の前の事象を見るんで、目の前の事象を言葉にすると全く別のものなんですよね。そうするとアプローチが全く変わるんで、できるもできないも全部白紙に戻さなくちゃいけない。そうすると『できるって言ったじゃん』と言われても『できるわけねえよ』っていうケンカが起きるわけですね」(青木)

そんな苦労を越えながら現在のTiNKが生まれました。

青木さんはこう話します。「一番最初はスタートアップなので1万個くらい作れればという話だったんですが、tsumugがいずれプラットフォーマーとしていろいろなものをつなげるとなると、デバイス=会員数。そう考えて100万台出荷できたらすごいよねと言う話をしています」

牧田さんも「最初の1年はほぼ4人だけで走ってきましたが、その時期にビジョンや何をしたいかをお互いに共有できたことで、部門が違くてもうまくコミュニケーションできているなと感じています」と述べました。

青木さんと牧田とはこんなエピソードもあります。最初のミーティングで青木さんが「いつどんなモノを作って世に出したいか、妄想の範囲でかまわないから年表を書いて。それと自分の人生設計もそこに書き入れてみて」と伝えたといいます。ハードウェアというお金と時間のかかる分野でありながら、スタートアップのスピード感を目指すtsumugの根底には立場を超えた互いへの理解が垣間見えました。

ハードウェアだってオープンソースでもいい――開発キット『TiNK DVK β』

今回のイベント参加者に特典として無償提供するTiNKの開発者キット「TiNK DVK β」。このDVKについて、さきほどの青木さんに加え、部谷修平さん、高橋三徳さんというtsumugのエンジニア3人が説明しました。

TiNK DVKは2018年7月に販売開始予定になっており、β版は一部機能を除いた先行バージョンです。β版ではTiNKシリーズの開発に実際に使用しているSDKを公開していて、ハードウェア本体をAPIで操作することも可能です。

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DVKの説明をするエンジニアの部谷さん(写真:集合写真家 武市 真拓 http://hiro.takechi.jp)

今回のTiNK DVK βでは、SDKについてファームウェアのソースコードやビルド環境、回路図などを提供しているだけでなく、HDKについても回路図や機構図面、3Dデータを提供しています。これら開発環境公開の根底には一貫した考え方があります。

「基本的にハードウェアだってオープンソースでも良いはずで、本当に安全だと言うのであれば図面やソースコードを全て公開したとしても(セキュリティを)破れないのが僕は正しいと思っています」(青木)

高橋さんもこう言います。「コードを隠せば安全だというのは間違っていて、コードをオープンにした状態で安全でないと本当に意味がないんですよね」

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左:青木さん 右:高橋さん (写真:集合写真家 武市 真拓 http://hiro.takechi.jp)

DVK βにはモーター(アクチェータ)やAfero、LEDなど必要なデバイスがほとんどそろっています。ビジネスではもちろん、プライベートでも遊び心ある使い方ができるかもしれませんね。手に入れた人はぜひいろいろと試してみてください。

tsumug的デザイン論、「プロトタイプを実際に使ってみて評価することが大切」

TiNKはプロトタイプを試行錯誤した末に現在のデザインにたどり着いています。TiNKの製品デザインを当初よりメインで担当をしている上町達也さん(secca inc.代表取締役)と牧田社長が「ハードウェアのデザイン」を語りました。

牧田に「スタートアップってなかなかデザインにお金を掛けられないので、最初は『一緒に考えて』という感じで上町くんにデザインをお願いしました」という上町さんは「僕はすぐに形にします」と言います。「実際に使ってみて、人間とモノの関係は最低限確認し、評価することを大切にしているので、その中で段々とこんなのが良いんじゃないかというデザインを絞っていきます」

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トークセッションの中でもこれまでに製作したプロトタイプの数々が登場します。

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TiNKのプロトタイプの数々

またデザインの過程においてはスタートアップならではの課題もありました。「スタートアップの辛いところで、最初から量産ができないので部品の調達がものすごい大変なんです」(上町)

ソフトからハードへ――コードを書くだけじゃ満足できなかったエンジニアのチャレンジ

エンジニアというとWeb業界ではソフトウェアのエンジニアが取り上げられることが多いですが、ここでは、ソフトとハード両方のエンジニアリング経験を持つ2人からハードウェアの魅力について話しました。

もともとソフトウェアのエンジニアだったkeyさん(フリーのエンジニアでtsumugを手伝っている)がハードウェアに触れたのはここ数年とのこと。「簡単な試作のハードウェアを作ることのハードルは想像以上に低かったです。秋葉原で部品を買ってきて、本を読んだら半日くらいで組めちゃいました」

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tsumugの高橋三徳取締役も「やってみるとコンピュータって単純だなって思いますよね。いきなりWebプログラミングするとレイヤーが高いじゃないですか。でもハードならメモリは使い放題だし、CPUも意識する必要ないですしね」といいます。

ハードウェアに触れることで、ソフトウェア開発においてのメリットも感じています。

「下(=ハードウェア)がわかると怖いものがないんじゃないかなと思いますね」(高橋)
「ハードのことがわからなくてもウェブアプリは書けるとは思いますが、ハードがわかった方がよりコンピュータの気持ちに立ったプログラミングができるようになります」(key)

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「ソフトウェアって移り変わりが早いから新しく入る人はどこから手をつけたらよいかわからないですよね」(高橋)
「それに比べると、ハードは息が長いので、最初に腰を落ち着けて取り組むには良いかもしれないですね」(key)

エンジニアのリモート&パラレルワークは現実的か


ここでは少し視点を変えてエンジニアの「働き方」に焦点を当てたお話です。最近では「働き方改革」などで注目を集めている「リモートワーク」「パラレルワーク」といった言葉ですが、実際にそのような働き方を実現している、部谷修平(tsumugエンジニア)、keyさん(フリーランス/tsumugエンジニア)小笠原治(tsumug取締役)の3人が議論しました。

複数企業で取締役などを務める小笠原はパラレルワークに潜む企業側の矛盾を指摘します。

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「パラレルワークが一般化すると例えば守秘義務みたいなものの難しさの話は出てくるでしょうね。会社としてもその人が持つノウハウを期待して仕事を依頼するんだけど、一方で、こっちで開発したものを別の会社に持って行かれたら困るという」(小笠原)

一方でフリーランスのkeyさんはパラレルワークのメリットをこう話します。

「僕が前にいた会社がいきなり倒産したことがあったんですけど、その時に複数収入源があればそのリスクを分散させることができますよね。また、会社にはそれぞれカルチャーがあって、会社をまたいで働いていればその良いところと悪いところを比較してみることができます。それを別の会社でも提案をして全体の業務効率をあげるなんてことができますね」(keyさん)

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パラレルワーク実現のためには、リモートワークが認められることも重要になりますが、働きはじめてから一貫してリモートワークを続けている部谷氏はその際に重要だと感じていることがあると言います。

「リモートワークは、会社にとってはマネジメントのしにくさなどのリスクがあるわけですよね。だから個人のアウトプット能力がすごく大切だと感じています。『今この作業をやっている』とか『ちょっときつい』とかっていう表現をする、またその仕方を工夫することが大切だと思います」(部谷さん)

tsumugのメンバーの多くがパラレルワークやリモートワークを経験しています。2017年6月には新たにエンジニアを採用し、今後もエンジニアの求人を募っていきますので、ご興味のある人はぜひお声がけください。

CES 2018 定点観測&出展者目線レポート

最後はスペシャルセッションと称して2018年1月に米国ラスベガスで開催したCESを振り返りました。

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セッション開始前には参加者全員にドリンクが配られ、みんなで乾杯

CESは世界最大の家電見本市です。tsumugも3年連続の出展で、このセッションでは現地に参加したメンバーたちの生の声を聞けました。CESには11カ所の公式会場があり、tsumugが出展したのはスタートアップが集結する「Sands Expo」。メイン会場ではないものの、近年のクラウドファンディングの発達とともにスタートアップの出展で盛り上がりを見せているエリアです。

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左:池澤あやかさん(tsumugエンジニア、タレント)右:牧田

またあまり知られてはいませんが、CESにはスイートルームミーティングというものが存在しています。ホテルのスイートルームにてメディア関係者を招待しクローズドにプロモーションを行うことが可能です。

小笠原さんは「出展したいという人は、通常の出展で大きなお金を掛けるよりも最初のうちはホテルの1部屋を借りて展示を行うのがおすすめです」といいます。tsumugは来年のCESへの出展も決定しているので、参加予定の方は、是非ブースに足を運んでみてください。

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左:松永夏紀さん(フリーランス/tsumugエンジニア)右:小笠原

セッション終了後の懇親会でも話が尽きることはなく、大盛況のうちにイベントは幕を閉じました。

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懇親会の様子 (写真:集合写真家 武市 真拓 > http://hiro.takechi.jp)

会社でハードウェア開発をしているという参加者からは「DVKが届くのが楽しみ。届いたら早速分解してみたい」というならではの感想もありました。

また、tsumugの自由な働き方への共感の声も多く聞こえてきました。
「エンジニアとして働いていると、製品の納品時期とそれ以外の時期で忙しさが全く変わるので、そのサイクルに合わせて自分で自由に働き方を決められるのは理想的だと思います。」

「tsumug Tech Day」は今後も連続して開催する予定ですので、興味を持たれた方はぜひイベントへ参加してみてください。


写真:集合写真家 武市 真拓 http://hiro.takechi.jp
文:ハシモトユウジ @rootroute1125

tsumug Tech Day 1st、その他のレポート

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