これを機に自宅でMakeを楽しもう オープンデータで広がる“Make At Home”

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世界中で、新型コロナウィルス(COVID-19)対策による自宅待機が行われています。メイカーイベントもほとんど中止になっています。そんな中、メイカーたちは自宅で楽しみ、他人に貢献する活動を続けています。

メイカーイベントの多くはオンラインに

この3月4月、通常なら僕は「Open Source Hardware Summit(ニューヨーク)」に出席する予定でした。その後「NT京都」「つくろか!」「Maker Faire Kyoto」など、さまざまなイベントに参加する予定だったのですが、そのほぼすべてがオンラインに移行しています。

Open Source Hardware Summit

テクノロジーイベントだけに、オンラインへの移行は手慣れたものですし、オンラインならではの工夫をするイベントも行われています。3月13日に行われたOpen Source Hardware Summitでは、オンラインの配信とともに、イベントの登壇セッションごとに、チャットサービス「Discord」を使ってチャンネルが開設されていました。

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Open Source Hardware Summitで登壇中の金沢大学 秋田純一教授。チャットサービスのDiscordが同時に行われ、聴衆が反応や質問をしている。
 
このトークセッションごとに立ち上がったDiscordの併用は、同じセッションの内容を深めていく目的に役立ちます。ちょうど、実際のイベント登壇後に名刺交換列を作り、そのまま懇親会などで話していく効果があります。また、登壇者が資料を公開するにも役立ちます。秋田先生のトークテーマ「NDA-Free & Open Source on LSI Design & Fabrication」でも、登壇後しばらくは聴衆とのやりとりが続いていました。

中日韓対話疫情之下的危機与対策

4月12日の深センのインキュベータ「iMakerBase」が主催したオンラインイベント、「中日韓対話疫情之下的危機与対策」では、僕もオンライン登壇しました。韓国からの登壇者を含め、テンセントが提供するテンセント会議(Tencent Meeting)で300人以上が視聴し、それぞれの国の状況について話しました。

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Tencent Meeting上でのイベント。機能や画面のUIはZoomにすごくよく似ている

つくろか!

4月19日に行われたメイカーイベント「つくろか!」では、VRチャットツールのclusterが使われました。clusterは、VR空間上にステージや観客を配置し、より「イベントに出席している/見ている/見られている感」が出せます。

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VRイベントツールのcluster。「その場にいる」感がより強く出る

僕もオンラインで登壇することがありますが、聴衆からの反応が伝わってこないのは、いまいち戸惑うところです。clusterではまず、VR空間上に他の参加者の存在が見えるので、「一緒にイベントを見ている」という感覚があります。そして拍手やサイリウムなどの反応があるので、通信のタイムラグはあるものの、フィードバックも伝わってきます。

参加者としても、VR空間上でステージに近づくと、声が発表者のいるところから聞こえてきたり、他の聴衆をアバターで見れて、「お、xxさんもいるな」と気づけるなど、他のオンライン会議ツールとは違う魅力があります。


続々立ち上がる衛生機器自作のプロジェクト

マスク、フェイスガード、防護服などの不足が各地で問題になっています。増産まではまだしばらくかかるでしょう。

3Dプリンターのデータ

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Prusaが提供しているフェイスシールドのデータ

医療機器はしっかりした品質基準と検査を伴うものですが、マスクやフェイスガードのようなものが不足しているときに、しっかりしたものが手に入らないからナシで済ませるよりは、DIYで賄ったほうがまだいいでしょう。チェコ共和国のオープンソース3Dプリンター企業「Prusa」などが、フェイスシールドの形状データを公開し、いくつかのメイカースペースではレーザーカッターなどを用いて自作する試みが始まっています。

もちろん、何でもDIYが推奨されるわけではありません。マサチューセッツ工科大学では「個人的に制作した防疫用品を医療目的に使うのはやめよう、ガバナンスするためのチームとガイドラインを作ります」という趣旨の告知を出しつつ、(Update on efforts to provide PPE for local hospitals、PPEはpersonal protective equipmentの意味)オープンソースの人工呼吸器などのプロジェクトを進めています。

Maker Faire Kyoto

また、5月2日~3日に予定されていた「Maker Faire Kyoto」は、リアルイベントではなくオンラインに移行しましたが、イベントに向けて誰でも参加できるチャットグループが作られています。医療についての情報もやりとりされているのですが、「緊急事態宣言下で楽しく過ごす50の方法」として、楽しく自宅で過ごす方法についてアイデアが交換されています。

自宅のメンテナンス、読書ログをつけて読書量を増やすなど、こうしてアイデアを出し合う行為そのものも、苦しいときを乗り越える力になります。

オンライン学習をオープンデータが後押しする

学校も休校が続いているため、オンライン授業のニーズが高まっています。まず学習塾やプログラミング教室などは、コンテンツや動画を積極的に公開し始めました。

福井県の取り組み

臨時休校が続く公式の学校が、オンライン授業のための整備を揃えて授業を行うのは、まだ一般的にはなっていません。ですが福井県では、「ふくいわくわく授業」として、小1~中3までの各科目の学習動画をオンラインで公開し始めました。

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ふくいわくわく授業。県独自の学習コンテンツをYouTubeで公開している

時間割ガチャ

エンジニアの福野泰介氏は、こうして公開されている学習のためのコンテンツをオープンデータの形で集めて、学年によって時間割を自動で作る「時間割ガチャ」を開発しました。小学生から大人まで、さまざまな言語に対応したコンテンツが並んでいて、これで時間割をつくってみるだけでも楽しいものです。

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福野泰介氏が開発した時間割ガチャ。福野氏はオープンデータ、シビックテックなどの試みでも多くのプロジェクトを手がけている


海外の大学の取り組み

また、もともとオンラインでの講義に積極的だった海外の大学では、EDXなどの取り組みで膨大なオンラインコンテンツが公開されています。
今回の危機は、まだしばらく続きそうです。それでも、DIYで毎日を楽しく実りあるものとする選択肢は、今回紹介したようにたくさんあります。多くの人がこのときを振り返って、「こういう楽しみもあって、よかったな」と思うことを願っています。


文・写真:高須正和

無駄に元気な、Makeイベント大好きおじさん。DIYイベントMaker Faireのアジア版に、世界でいちばん多く参加している。日本と世界のMakerムーブメントをつなげることに関心があり、日本のDIYカルチャーを海外に伝える『ニコ技輸出プロジェクト』や『ニコ技深圳コミュニティ』の発起人。 MakerFaire 深圳(中国)、MakerFaire シンガポールなどの運営に携わる。現在、Maker向けツールの開発/販売をしている株式会社スイッチサイエンスのGlobal Business Developmentとして、中国深圳をベースに世界の様々なMaker Faireに参加。インターネットの社会実装事例を研究する「インターネットプラス研究所」の副所長、早稲田大学非常勤講師。 詳細はこちら

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