with コロナの世界で、どう適応して生きていけばいいのか ──New Norm Consortiumイベントレポート

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withコロナ時代にどう生きるかをテーマにした、New Norm Consortium主催のトークイベントが何度か行われています。ここではそのトークイベントから、4月28日と5月29日の2回をピックアップしてお届けします。

目が覚めると世界の状況が変わっていた

ここ数カ月、目まぐるしく世の中が変化し、多くの人々が「目が覚めると世界の状況が変わっていた」という感覚をもったのではないでしょうか。

1月末の東京は、春節で来日する中国人観光客向けに、至るところに中国語の広告があふれていました。今から考えると、あれこそが幻なんじゃなかったかと思えます。その後、中国だけなく、ヨーロッパ、アメリカでも新型コロナウィルスは猛威をふるい、4月7日に日本でも緊急事態宣言が発令。

多くの会社でリモートワークが行われ、飲食店が休業を余儀なくされたり、私たちの生活にも直接的に大きな影響が出ました。

私たちはこの大きな変化にどのように適応して生きていけばいいのでしょうか。4月と5月に行われたNew Norm Consortiumのオンラインセッションの内容をヒントに、考えようと思います。

「New Norm」とは「新しい基準・規範」の意味。New Norm Consortiumは、新型コロナウィルスで世の中が脅かされる中で、新しい当たり前を獲得するために、新しい基準を提示する目的で創設されました。

「New Normとはなにか」から始まったNew Norm Meeting Vol.1

“New Norm”の定義

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4月28日に行われた「New Norm Meeting Vol.1」の1つ目のセッションは「What is “New Norm“?」と題して、NewNormの概論が話し合われました。登壇者は京都芸術大学教授でさくらインターネット社のフェローでもある小笠原治氏(写真左)、経済産業省の水口怜斉氏(写真右)、そしてグレートジャーニー社代表の安川新一郎氏(写真中央)。

まず、小笠原さんから「New Normとはなにか」「なぜNew Normコンソーシアムを作ったか」の説明がありました。このコンソーシアムは、在宅勤務やリモートワークに切り替わりつつある中で、オンライン前提の働き方の新しい基準を作っていくことを目的としているとのこと。

その後、安川さんから、現在の状況を感染症の歴史的視点からどう捉えるかのレクチャーがありました。安川さん曰く、歴史的には今回の新型ウィルス感性拡大のように「新しい当たり前を考えなきゃいけない」と追い込まれたときに、大きなブレークスルーが起きているとのこと。

そして水口さんからは、経済産業省と民間のメンバーで4月に出したレポート「企業・大学・官庁の若手が描く未来のたたき台」についての発表がありました。「5つの価値変化」と題して、未来づくりに向けた若手の共感ポイントを説明。withコロナの状況においては、個人レベルでのコミュニティの在り方が、組織にひもづくフォルダ型からプロジェクトベースのハッシュタグ型になる流れが加速すると言います。

歴史を振り返ると、感染症によって社会が混乱するときにこそ次の大きなブレークスルーが起きています。たとえば、会社に行けないことにより、リモートワークになって、コミュニティの在り方も大きく変化するのではないでしょうか。だからこそ、次の時代の新しい基準をつくることが大切になります。

新型コロナウィルスにより深刻な影響が世界全体に与えていますが、「歴史的な俯瞰した目で見れば、大きなブレークスルーのきっかけになる」という視点が興味深いと思いました。

オフィスは作業場からコミュニケーションの場へ

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2つ目のセッションはNew Norm時代におけるオフィスの形はどうあるべきか本社集中型オフィスと分散型オフィスという視点から、議論が行われました。登壇したのはJapan Digital Design社(以下、JDD)CEOの上原高志氏(写真中央右)、リコーの堀場一弘氏(写真中央左)、電通の吉川隼太氏(写真左)、そしてtsumug社長の牧田恵里(写真右)です。

上原さんからは、従来の本社集中型オフィスの文脈から「オフィスという場所の価値」について、JDDでの状況を踏まえた話が飛び出しました。オフィスの価値が「もともといなきゃいけない」ものから、「偶然性を創発させて、なにかを生み出す」ものへと変化していると感じているそうです。

その上原さんの発言をつなぐかたちで、吉川さんと堀場さんがオフィスの価値を再定義する発言。本社は新しい「出会いの場所」として生まれ変わり、業務効率の生産性から、知的創造も含んだ生産性に変化するのではないかと言います。

一方で、分散型オフィスの観点から、牧田恵里さんから、tsumugが新しく発表した「TiNK VPO」の紹介がありました。TiNK VPOはtsmugの鍵のプロダクトであるTiNKを使って、空きスペースを入退室管理できるワークスペースにできるサービス。社員が使っていない土曜だったり夜の時間を、場所を一般の人々に使ってもらって、マネタイズできるのも特徴です。

アフターコロナの状況において、オフィスは作業の場としての役割が薄くなっていくのではないでしょうか。一方で強くなるのが、コミュニケーションの場としての役割です。作業の場としては、自宅やTiNK VPOのような分散オフィスが使われていくのでしょう。

私自身の感覚では、リモートワークを体験して、作業の場としてのオフィスではないかと考えています。ほとんどの仕事が家庭から完結できて、かつ事務的なやりとりならば、ZoomSlackTeamsなどのツールのほうが効率いいと感じます。

信用を前提とした働き方に変化

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コロナウィルスの状況下置いて「会社と社員の関係の基準はどう変わったか?」を考えるセッションです。ITスタートアップの経営者が登壇しました。登壇者は、BASE社CEOの鶴岡裕太氏(写真右上)、スマレジ代表取締役の山本博士氏(写真左上)、ヌーラボ代表取締役の橋本正徳氏(写真左下)、同じくヌーラボの安立沙耶佳氏(写真右下)。

山本氏は、リモートワークだと仕事と生活の境界線が曖昧になり、時間単位で拘束するという考え方よりも仕事の中身にフォーカスすべきではないかと思っているとのこと。

橋本氏はマネージメントの視点から、今まで社員を信用していなかった社会から、信用を前提とした社会に変わると言います。そしてその後は、そもそも社会が信用するしないの判断が必要なくなるトラストレスな社会へと変化していくと考えています。

一方鶴岡氏は、命と生命がすべての意思決定の基準となったことに驚いたのこと。会社の利益よりも会社のメンバーの安全、これ以上に大切なものはない、と締めました。

リモートワークになると、会社と社員の信頼を前提とした働き方にならざるおえません。時間単位で拘束するメンバーシップ型の働き方ではなく、仕事の責任範囲を明確にしたジョブ型の働き方に変わっていくことが共通認識となっていました。

リモートワークでは「どういう姿勢で働いたか」ではなく「どういう成果が出たか」で評価するしかなくなります。以前のようにオフィスで長く働いていることが評価に値する価値観が薄れていくのではないかと感じました。

引きこもりの逆襲が始まる

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その次のセッションである「キャリアのNew Norm」では、「withコロナの時代、キャリアはどう変化するか?」を考えるセッションになりました。登壇者は、Mistletoeシンガポールの大蘿淳司氏(写真中央)、デジタルハーツプラス代表取締役の畑田康二郎氏(写真左)、リンクトイン・ジャパンの日本代表村上臣氏(写真右)。

まず村上さんは、人材採用の状況について、コロナの影響で人材採用は引き締められるものの、日本全体では人材難なので、特定のロールについては厳選採用が続くのではないかと指摘します。ただし、コスト意識も高くなるので、会社と人が直接つながって、採用が行われるとのこと。

一方で大蘿さんは、「スキルや会社のポジションという考え方が古いのではないか」という問題提起をしました。畑田さんは、経済産業省に14年勤めた後、スタートアップに転職。その経験を踏まえて、コロナによって世界中の人たちが強制的に引きこもりにさせられている現状から、今後は引きこもりが主戦力になると明言しました。

アフターコロナにおいては、活躍する人材のタイプも変わってきます。今までは、会社や組織に自分自身を合わられる人が求められていました。しかし、今後は時間的、空間的な制約なく、会社と個人が直接つながることにより、引きこもりのような今まで活躍できていない人たちが主人公になる可能性があります。

リモートワークや副業が当たり前になると、所属している会社に忠誠心を示すという働き方から、プロジェクトごとに世界中の人々と適宜コラボレーションをしていくという働き方に変わってきているように思います。キャリアについては、社内の内部外部問わずにコラボレーションをしていくことが可能になっていると感じています。

オンラインを前提とした教育がいっきに加速した

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「大学のNew Norm」というテーマでは、小笠原さんは京都芸術大学、川原さんは東京大学で教えている立場から、大学のオンライン授業の状況と課題について議論をしました。

お二人の話を聞いていると、どちらの大学ともオンライン授業への対応はできているようでした。一方で研究や実習など物理的になにかしないといけない分野については課題が多そうです。

このセッションで、新聞記者が興味深い質問をしていました。それは「オンライン授業を前提とするならば、大学入試は変わるのか?」という質問。大学教育がオンラインを前提とするものに変わるのであれば、究極的には空間的な制約がなくなるため、入学試験がなくなるのではという問題意識に基づく質問でした。

川原さんからは「東大では入試についていろいろ検討している段階です」という回答でしたが、後日、東京大学大学院の入試はオンラインで行うことが正式に発表されました。教育の形が根本的に変わっていくのではないかと感じました。

より具体的に突っ込んだNew Norm Meeting Vol.2

5月29日に行われた「New Norm Meeting Vol.2」では、より突っ込んだ内容が話し合われました。
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同じ時間に同じ物を食べているという共時性に新たな飲食店の可能性がある

最初のテーマは「New Normから産まれるサービス」で、このセッションでは主に新型コロナウィルスの感染拡大により、大きな苦境に立たされている飲食店について議論が行われました。トレタの中村仁氏(写真下)を挟んで、小笠原治氏と牧田恵里が登壇。

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まずは六本木にある立ち飲み屋「awabar」のオーナーでもある小笠原氏が、「飲食店の今の状況を考えたときに、お客さんにお店に来ないと捉えるか、オンラインでお店を拡張できると考えるかが分かれ道だと思う」問題意識を提起。

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それに対し豚組しゃぶ庵のオーナーでもある中村さんが、自分が実践したアイデアを披露。自粛期間中、いろいろなところに豚しゃぶセットを届けて回ったところ、FacebookやTwitterのタイムラインがしゃぶしゃぶを食べたという投稿で埋め尽くされたとのこと。場所を離れていても、同じものを食べているという共時性、ここに可能性を感じたそうです*1

二人の議論の中から、飲食D2Cの会社を設立することが決まったそうです。今までの常識が逆転する中で、どのように新たなサービスを生み出していくか。そんなスリリングな状況の一端を味わえたセッションでした。

自動運転は「あって欲しい」ものから「ないと困る」ものになった

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「ヒトとロボット・知能技術のNew Norm」のセッションでは、池澤あやかさん(写真左上)が進行を務め、安川新一郎さんがVol.1で行った感染症の歴史について、深掘りをして説明しました。その後、トヨタの西城洋志氏(写真右上)がリードする形で、New Normのモビリティについての議論になりました。

まず、西城さんがトヨタ自動車のモビリティについて、”人のモビリティ””モノのモビリティ””情報のモビリティ”という3つの定義について話し、中でもモノのモビリティには、今回の状況でもコンビニで日用品が買えるいう、物流の状況に対する対応力のすごいさに驚いた様子。数十年前ではあり得ない、と。そしてモビリティの話から、自動運転技術の話に。この事態によって、自動運転技術の開発にドライブがかかるんじゃないかと思っているとのこと。

「モノのモビリティ」という観点では知能技術やロボットにより、もう既に生活が支えられているという観点が面白いと思いました。今回の事態によって、自動運転は「あってほしい」ものから「ないと困る」ものに社会の優先度が上がり、技術開発がより加速していくのではないでしょうか。

最近話題の押印問題と「ニューノーマル」の言葉の捉え方

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Vol.2の最後のセッション「契約のNew Norm」というセッションでは、New Normにおける法律や契約の在り方が議論されました。登壇者は日本総合研究所の東博暢氏(写真右上)とシティライツ法律事務所の水野祐弁護士(写真下)。

最近話題になっている押印問題は、弁護士の水野さんによると、法律よりも人々の意識が問題のようです。押印については、法律よりも先に商慣習を民間で作ってしまえばいいとのこと。一方東さんはテレワークについて、以前は「テレワークにできる制度がない」と嘆いていた人が、今は突貫でテレワークの制度を作っている。やろうと思えば変われるという例を示しました。

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また、連続起業家の孫泰蔵氏からの「New Normな法案、お二人ならどう考えますか?」という質問に対しては、水野さんは個別の法律の問題よりも、法律の作り方とか変え方そのものを変えたほうがいいと指摘。一方東さんは、法律というよりも「ニューノーマルの言葉の捉え方」に問題があると言います。本来緊急事態宣言が出た時点で、新しい次元の異業種連携とか、産学官連携、もしくは地方創生をやっていかないといけないのに、単にソーシャルディスタンスや在宅ワークといった生活様式の変化のみに注目が集まっていることに対して危惧していました。

新しい時代がやってくる

ここ数カ月、私自身、鬱々として落ち込むことが多い日々でした。街からは人が消え、まだまだ多くの人々が職場で仕事ができない日々が続いてきました。この状況をあえて前向きにとらえることによって、個人も社会も新しい時代を迎えられるのではないかと感じました。

newnorm.jp

文:藤井 武

ライターを目指すSier勤務のエンジニア。IoT分野はただ今勉強中。tsmug edgeに関わりだしてから、家に深セン発の怪しいガジェットが増えた。中華製デジタルアンプがお気に入り。

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*1:※後日、豚組しゃぶ庵を閉店することが発表され、同時にオンラインに移転するためのクラウドファンディングが始まった。

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