なぜスタートアップはCESに行くべきなのか 私がtsumug立ち上げ前にCESに参加した理由: 牧田が行くCES 2020

f:id:syakko:20200301200052p:plain
盛り上がる初日のLVCCメインゲート

世界中の最新家電や電子機器が集まる、世界最大級の見本市「CES」。そのCESに、今回もtsumug社長の牧田恵里が参加してきたので、その様子を本人にレポートしてもらいました。前編は過去のCESと今回のCES 2020を比較しながら、CESとtsumug立ち上げの関係性についても紹介します。




後編はこちらedge.tsumug.com

f:id:syakko:20200301200144p:plain
CES2020に参加中の牧田社長

2015年からCESに参加

f:id:syakko:20200301200300p:plain
CES2015の様子

私が一番はじめにCESに参加したのは2015年。「CES 2015」の2日目からの参加でした。

ギリギリに出発を決めて、当時自費で行くには高すぎる飛行機代にビビり、CES2日目に到着する飛行機を予約して飛びました。当初はCerevoのアルバイトとして参加。そのころすでに10回ほどCESに参加していた岩佐琢磨さん(当時Cerevo代表、現在はShftall代表)に「今年(2015年)のCESはマジでやばいから、デバイスを作るなら絶対見たほうがいい!」と何回も言われて、ようやく重い腰をあげた記憶があります。

Exhibitor Badge(出展者バッジ)で参加したCESでしたが、まさに圧巻の一言!ビジネスを目的とした17万人以上のビジネスパーソンが世界中から集まり、到底1日では回りきれない会場。空港に入ったときからRegistration(参加登録)が可能で、ラスベガスの街全体がイベント会場となるこの期間。熱量とビジネスのスピード感に圧倒されていました。同年12月、私はtsumugを立ち上げることとなります。

今回のCES 2020では、CerevoのブースにAferoとの連携デバイスを展示し、CES 2021に向けた情報収集をメインに参加しました。大した回数を参加したわけではないのですが、せっかくなので過去5回の記憶と今回のCESを比較しながら、個人的な見解をまとめてみます。



【参考】CESと私の略歴
2015 CerevoのアルバイトとしてCESに参加
2016 Cerevoのアルバイトとして参加&tsumugとしてのリサーチ
f:id:syakko:20200304094008p:plain
2015年はCerevoのアルバイトとして参加した

2017 sakura.ioの事例としてさくらインターネットのブースに出展
2018 CerevoがSandsエリアの入口という好立地を獲得したことで、スタートアップ展示を試みる。 tsumug主体で、メルチャリやABBALab投資先など系11社の展示を行う(メルカリの報告イベントで登壇した資料
2019 J-startup第1期として初出展。世耕 弘成元経済産業大臣がCESに来場
2020 Cerevoブース内で、AferoとJDDとの連携事例展示



f:id:syakko:20200301201248p:plain
参加したCESの看板と牧田

家電から電子機器へ。CESの移り変わり

f:id:syakko:20200301201413p:plain
CES期間中のラスベガスマップ

日本ではしばしばCESのことを「家電フェア(あるいは家電見本市)」と呼ぶことがありますが、現在では「家電」に限らず「電子機器全般」の見本市となっています。これは、CESが長らく「Consumer Electronics Show」と呼ばれていたことに由来しており、現在は公式で「Consumer Electronics Showとして紹介しないように」と言われています。

近年は大きく「LVCC(Tech East)」と言われる大企業の展示が並ぶメインホールと、「Sands/Eureka(Tech West)」と言われるスタートアップ企業の展示の多いホール、登壇が行われる「ARIA(Tech South)」のエリアに分かれます。

はじめて参加した「CES 2015」では、事前のCESのニュースにおいて日本の車メーカーの展示ブースをベースに放映されたいたので「家電フェア?車の展示が多くてモーターショーみたいな感じなのかな?」と思いながら飛行機に乗ったのを覚えています。

Sandsエリアの復活

f:id:syakko:20200301201512p:plain
Sandsエリア

2015年に、岩佐さんが私にCESをすすめた理由の1つに、“Sandsの復活”というのもありました。その年のSandsは、クラウドファンディングで調達が成功し、美しい造形のプロトタイプを引っ提げて参加するスタートアップだらけの会場でした。

そのときレポートを書く必要があっため、事前にクラウドファンディングで資金調達が成功し出展している企業をリストアップし、その全部の出展ブースにヒアリングしました。(そのときのレポートがこちら)そのとき、“Cunsumer Electoronics”という概念が、これまでの“白物家電”を飛び越えたカオス感が半端なかったです。

ヒアリングした出展者には、大きく2つの共通点がありました。1つ目は「リリース時期はいつになるの?」という質問に対して、ほとんどの企業が「End of 3rd Quarter」と答えていたこと。当時はよくわかっていませんでしたが、米国の多くの企業が「クリスマス商戦」を目標とするので、本当にその時期にリリースできようができまいが、「End of 3rd Quarter」と言っておけばいい的なことだったようです。

もう1つは、「量産のネックになるのはなに?」という質問に多くの人が「バッテリー」と答たこと。私もこのあと自社製品で経験するのですが、「造形重視のプロトタイプで使用した汎用的なバッテリーが量産機の形状に合わない」とか「大容量な小型バッテリーがでてきてディスコンになる」とか、バッテリーに悩まされるスタートアップは多いようです。

その時代それぞれではあるとは思いますが、きっとどの時代のCESでも、いろいろな企業が展示品との差に悩まされたりしたのではないでしょうか。そんな業界の新しいものを産み出す苦しみを、CESでは垣間見れます。そんな同じような苦労をしてきた先輩メーカーたちと会えるも、CESの楽しみのひとつです。

f:id:syakko:20200301201624p:plain
CES 2017で話題だった50周年の看板の前で記念写真

2017年にCESは50周年を迎え、そのときには参加者のバッジに参加回数が書かれたシールが貼られていました。30~40回という強者もおり、話を聞いてみると「景気の影響はあるけれど、その時代時代で新しいものづくりに対する気概みたいなものには興奮するよ」と、ものづくりの若輩者である私にもグッとくるものがありました。

LVCCはやはりメインエリア

f:id:syakko:20200301201810p:plain
メインエリアのLVCC

今回のCES 2020で、私ははじめて初日からLVCCに行けました。これまで出展準備から当日の展示、メディア対応などで、LVCCを見れたのは毎回閑散とした最終日の午後だけだったのです。

正直、去年までそれでいいと思っていました。なぜなら、Sandsの来場者数の多さと「LVCCよりもSandsが盛り上がっているよ」というLVCCを見た人たちの感想から、自分で体験していないのに、「Sandsにいればだいたいわかるよね」くらいに思っていたからです。

初日、LVCCは車の混雑が半端なく、South Hallの入口から歩くことにしました。今まで見たことないほどに午前中から盛り上がる会場。SouthのGamingエリアでは、こんなにもゲームを体験して遊べる展示があったのかと興奮していました。一部、展示準備をしているところがあり、なぜだろうと思ったのですが、途中で偶然Business Insiderの新編集長の伊藤有さんに出会い、「午前中は来場者がCentralに集中するから、SouthやNorthではまだ準備しているところがあるよ」と教えてくれました。

LVCCのCentralは、毎年常連企業が同じ場所を陣取り、年間に数十億円以上のコストをかけて、その年の新製品や注力サービスを打ち出します。

f:id:syakko:20200301201859p:plain
CESの目玉でもあるLGの曲面ディスプレイトンネル

今回はCentralの常連企業が、Northや別のエリアに移動するという変化もあり、またLVCCの出展企業がSandsに大きく展示するなど、SandsのTechカテゴリーも毎年大きく変動しています。

コアな人が商談に来るARIAエリア

今回はスポーツに特化したIoTデバイスを開発するLEOMO, Inc.の加地邦彦さんが、ARIAのスポーツテック・エリアに出展しているというので行ってみました。

これまでARIAは、セッション(いわゆるセミナー)しかないと思っていたので、見にいく機会もなかったのですが、LVCCやSandsと違い、開放的な吹き抜けの明るい窓の導線を進むと、個別に区切られたショールームがあり、セッション会場と展示会場が一緒になっている空間で心地よかったです。

加地さん曰く、「メイン会場と離れていることで、逆にコアなスポーツテックのオタクばかりが来て、商談するにはいい環境」とのこと。セッション会場が多いので、セッション後に立ち寄る人も多く、人の流れの緩急もあるので展示スタッフも動きやすそうでした。

f:id:syakko:20200301202547p:plain
スポーツに特化したIoTデバイスを開発するLEOMO, IncのARIAの展示ブース

CESでのプロモーションの成功は開催前で決まる

各社のプロモーションも、毎年発見があります。「CES 2015」のときのCerevoのプロモーションは、ひとつの事例として、よくスタートアップとの会話で出てきます。おもしろいので、詳細は資料で見てください。

CESに出展する各社は、まずCESのAwardに応募します。その後「Unveiled」というメディア向けお披露目イベントに応募し、万全のプロモーション準備をした上で本番と、こういった流れで、いろいろ仕掛けをしていきます。

「Award」は、だいたい6月ごろから募集がはじまり、9月~10月あたりで、CESの運営団体であるCTAから結果の連絡が来ます。CESの前々日にある「Unveiled」で注目を集めて記事化されると、会期中に展示ブースにも人がたくさんきます。Awardを取れても取れなくても、新製品であればUnveiledに出展するのがオススメです。

Awardが取れると、Awardエリアもあるので人の目に触れる量が単純に増えるし、効率的にまわるためにAwardエリアからチェックする人もいます。

今回は、GrooveXの「LOVOTが量産品でCESに帰ってきた」的な海外メディアの記事が出ていたのはおもしろかったです。CESでプロトタイプからファンになってもらい、量産になったらまた出展して一緒に喜んでもらえる、という展開も一年に一回のお祭り的なCESならではの楽しさでもあります。

f:id:syakko:20200304091902p:plain
「量産品でCESに帰ってきた」と言われた、愛らしい表情のLOVOT

また海外のメディアに載ったとき、国別の反応の違いも見ることができ、国内外視点を変えてみれるのはとてもいいです。

今回私は、Twitter, Facebook, LinkedInなどで、ハッシュタグ「#CES2020」をチェックし、極力他国の投稿を見ていました。アラビア語や韓国語などであっても、各サービスの翻訳機能でその場で翻訳できるので、便利な世の中になったものです。英語が苦手な私にとっても最強のツール。

キーノートも含め今後はエンタメなプレゼンが登場するかも?

今回キーノートを含むセッションをいくつか見たのですが、まるで演者のようにスピーチのうまい人の話は、抑揚と簡単な英単語の説明だけで、会場の全員が音楽ライブのように歓声をあげて楽しんでいました。ちょっとしたエンターテイメントですね。

長蛇の列を並んでサテライト会場で見たサムスンのキーノートも、現地で見るとまた違った興奮があります。長蛇の列を並んでいる間にはじまったキーノートを、スマホのLive Streamingで一緒に閲覧しながら「Fuuuuu!!」などと叫んでいる来場者もいて、その反応も楽しかったです。

また、今回は私の好きな香川照之(市川中車)さんが、トヨタイムズの編集長としてラスベガス入りし、トヨタ自動車の発表前に動画Tweetしていたので、それも会期前のSNSプロモーションとして楽しめました。

ラスベガスという場所柄、もっと役者やタレントがエンターテイメント的にプレゼンするようなキーノートやセッションが増えてもよさそう。

f:id:syakko:20200304091953p:plain
ホテルの会場でキーノートが行われ、巨大なディスプレイにプレゼンが映されている

後編はこちらedge.tsumug.com

株式会社 tsumug | 〒810-0041 福岡市中央区大名 2 丁目 6-11 FUKUOKA growth next 301