メイカームーブメントはアジアが熱い! 中でも一番勢いがあるのが「Maker Faire Bangkok」

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2020年1月18日~19日の2日間、タイのバンコクで「Maker Faire Bangkok 2020」が開催されました。日本からも多くの出展がありましたが、今アジアで一番熱いメイカーフェアについて、現地の熱気とともにお伝えします。

www.makerfairebangkok.com

アジアでもっとも勢いがあるバンコクのメイカーフェア

筆者はアジアのメイカーフェアに世界一たくさん参加、出展しているため、「オススメのメイカーフェアは?」とよく問われます。


  • 東京:あらゆる意味でハイレベル
  • ベイエリア:原点にして頂点。2020年はまだ開催情報が伝わってこなくて残念。
  • 深セン:ハードウェアスタートアップの聖地
  • 台北:日本から近く出展レベルも高く、最初の海外出展ならここ


あたりは鉄板のオススメなのですが、近年、それらに迫る勢いで盛り上がっているのがここバンコクのメイカーフェアです。その楽しさはこの動画で一目瞭然でしょう。



ナイトパレード、ゴーカートなど、「フェスらしさ」が際立つバンコクのメイカーフェア

タイの独自性が光るバンコクのメイカーフェア

毎年1月上旬に行われる「Maker Faire Bangkok」は、2016年にミニメイカーフェアとしてはじまり、2018年にはメイカーフェアに昇格。2020年で5回目となります。

メイカーフェアはアメリカ発祥のイベントで、各国での運営者はアメリカ西海岸の文化に対して憧れがあり、どこのメイカーフェアの意匠も「アメリカ西海岸っぽく」なるなか、Maker Faire Bangkokは常に「タイらしさ」に満ちています。


  • 開始が午後2時と遅く、夜8時まで行われる宵っ張りのフェア
  • 土曜日の夜にメイカーフェア全体で行われるナイトパレード


などは、ナイトマーケットの街バンコクならではです。1月とはいえ、昼間のバンコクは酷暑で、各ブースにつけられた扇風機はフル回転しています。しかし日暮れ後は過ごしやすく、夜のために配置している照明やLEDなどが、Maker Faire Bangkokならではの風景を創り出します。

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屋台のような照明が輝き、夜空には飛行船。この写真は前日の準備中で出展者がいないが、一目でわかるバンコクの風景を創り出している。

バンコク独自の文化が目立つだけでなく、Maker Faire Bangkokの運営は見事なものです。以前タイ政府の関連団体NASDAに所属していて、今もコンピューター教育を手がける研究者のモーンと、教育用や開発用のハードウェアを手がけるオープンソース・ハードウェアGravitechの社長パン。その2人がメイカーフェアの運営をしています。

政府系の研究者モーンと産業界のパンの組み合わせが絶妙で、「社会の異なる領域の人々が出会うことでイノベーションが促進する」という、メイカーフェアのよさが年々拡大しています。

76%が初参加。「はじめてのメイカーフェア」を広げる

会場はバンコク中心部のショッピングモール「Street Rachadar」で行われ、会期中は多くの人たちが集まります。「メイカーを知らない人がふらっと訪れてメイカーたちの世界に触れる」というのは大変にすばらしいことです。

無料のイベントということもあり、多くの来場者が「自分にとってはじめてのメイカーフェア」を楽しみ、規模は年々拡大しています。過去4年のトータル入場者数は26000人で、そのうち76%がはじめての来客。男女比も、57:42と女性も多め。年齢層も40%が18歳以下と、ショッピングモールを訪れた親子連れにも集客できていることをうかがわせます。

そうした「はじめての人たち」を惹きつける仕組みを運営も工夫しています。そもそももナイトパレードがあるのはMaker Faire Bangkokだけですが、そのほかにも、まずは会場のビジュアルイメージ。タイはビジュアルのクリエイティブに溢れた国で、メイカーフェアバンコクのキャラクターやロゴデザインなどは、2016年当初から印象的でかつ親しみがもてるもの。

近年は世界的な石油会社シェブロンがスポンサーについたことから、会場の装飾もインパクトが強くフォトジェニックなものに進化していて、バンコクのインスタグラマーたちを楽しませています。

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期間中ずっと撮影スポットとなっていたメイカーフェアのシンボル


多くあるワークショップも来場者を惹きつけます。会場となったショッピングモールには、4つのワークショップ会場があり、初心者向けのものから大人向けまで多くのプログラムがあります。初心者向けで無料や定額のものもあり、手軽に参加できるものも多く、メイカーフェアの世界に子どもを惹きつけ、毎年500名以上がなんらかのワークショップに参加しています。

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子どもたち向けのダンボールワークショップ。バンコク在住で各国のメイカーフェアによく行く友人は、「地面に座るのはすごくタイぽく、ほかだとあまり見ない」と語る。

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ヘボコンも行われ、大人気

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世界的なボランティアのコンピューター教育施設CoderDojoもブースを展示。メイカーフェアでの出会いをより継続的な技術への興味につないでいく

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メイカーフェアバンコクの盛り上がりを説明するパネル。

メイカーの世界をつなぎ、より深くする

テクノロジーへの道を歩きはじめた人々をつなぎ、興味をシェアしてより強くしていく試みも続いています。ここ4年は、政府機関のNASDAが主催するYoung Maker Contestが行われ、年々拡大しています。

Young Maker Contestは、日本でいう高専プログラミングコンテストの自由部門にあたるような、特定のルールがない「IT技術で、何か社会をよくするもの」を集めるコンテスト。中学生や高校生が対象で、学校のプログラミングクラブやロボットクラブなどが、海のゴミを集める装置や車椅子をモーターで強化するものなど、さまざまな発明品を出展しています。

優勝者には50万バーツ(180万円程度)の賞金が与えられる本気のコンテストで、学生たちのプロジェクトは多くの来場者の目に2日間フルで晒され、さまざまな質問に答える、得がたい経験をすることになります。

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Young Maker Contestの表彰式


またタイの大手キャリアであるAISが、NB-IOTの開発ボードを出展し、オープンイノベーションを促進するなど、メイカーフェアから新しい仕事を生む試みも行われています。2018年から、タイ政府のコンピューター教育関係プロジェクトは加速し、関連する教育関係のスタートアップも増えてきました。

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通信キャリアのAISが自社提供のIoT開発ボードを展示


筆者は2016年に行われた第1回からすべてのMaker Faire Bangkokに参加し、電気街やスタートアップなどのメイカー関連産業も見ていますが、規模、運営、出展者とも年々順調に拡大し続けています。とくに2018年からの各分野の発展は目覚ましく、今のMaker Faire Bangkokは間違いなく東南アジアで一番勢いのあるメイカーフェアと言えるでしょう。

最大スポンサーであるシェブロンとの契約が今年2020年までで、スポンサーの状況によっては来年なんらかの修正が施される可能性もありますが、マレーシアや香港など、他の東南アジア諸国からの出展も増え続ける傾向にあり、2020年は深センからの企業出展も目立ちました。「M5Stack」「Makeblock」「Kittenbot」「Lilygo」などの各社が姿を見せるのは、現地での代理店が増えていることと会わせて、バンコクが「メイカーツールの市場として成り立つ街になってきた」ことの証明でもあります。

日本から参加しやすい海外のメイカーフェアとして、メイカームーブメントのアジアでの盛り上がりを確認する場所として、さまざまな意味でバンコクは今後も見逃せません。

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右から、香港でSTEM教育ハードウェア事業を手がけ、Micro:Bit財団アジアも兼任するワリス、Raspberry Piなどの製造を手がけるElement14のイザーク、マレーシアのメイカー企業CytronのYoon、スイッチサイエンスの安井と筆者。バンコクはメイカー系企業として見逃せない場所になりつつある。

文・写真:高須正和

無駄に元気な、Makeイベント大好きおじさん。DIYイベントMaker Faireのアジア版に、世界でいちばん多く参加している。日本と世界のMakerムーブメントをつなげることに関心があり、日本のDIYカルチャーを海外に伝える『ニコ技輸出プロジェクト』や『ニコ技深圳コミュニティ』の発起人。 MakerFaire 深圳(中国)、MakerFaire シンガポールなどの運営に携わる。現在、Maker向けツールの開発/販売をしている株式会社スイッチサイエンスのGlobal Business Developmentとして、中国深圳をベースに世界の様々なMaker Faireに参加。インターネットの社会実装事例を研究する「インターネットプラス研究所」の副所長、早稲田大学非常勤講師。 詳細はこちら

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