深セン「BYD」とは何者か? トヨタと電気自動車を共同開発、そしてモノレールまで

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BYDの本社敷地内を走るモノレール。このモノレールもBYDの製品

電気自動車と言えば「テスラ」の名前を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。テスラは世界で一番有名な電気自動車メーカーと言っても差し支えないでしょう。

では中国で一番有名な電気自動車メーカーと言えば、どこか。中国は60社とも言われる電気自動車メーカーがひしめき合っています。その中でも、日本ではまだそれほど知られていませんが、深セン市に拠点を置く「BYD(比亜迪)」は、多くの人が名前を上げる電気自動車メーカーのひとつです。

BYDは世界的に著名な投資家ウォーレン・バフェット氏が出資した会社であり、2019年7月にはトヨタと電気自動車の共同開発契約を締結しています。

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写真左:BYD本社入り口、右:BYDの名前ははっきりしないが、Build Your Dreamsというキャッチフレーズが使われている

そんなBYDの本社に、私は2017年と2019年の計2回、訪問しました。そこでのエピソードを交えながら、BYD社について紹介します。

深センの街中で見かけるBYD社の電気自動車

深センを訪れるとよく見かける青いラインが入ったタクシー。これはBYD社の電気自動車です。乗ってみると静かで乗り心地は悪くありません。

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写真左:街中でよく見かける青いBYD製のタクシー、右:BYDのタクシーのダッシュボード

深センでは、街中を走っている公共バスのすべてが「電気バス」になっており、タクシーの電動化も早いペースで進んでいます。

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写真左:BYDの社屋で展示されていた電動バス、右:中国の郵便局の電動トラックも

創業時20人から20年で20万人以上の会社へ

このBYD社が設立されたのは1995年。当初はガラケーやデジタルカメラなど、電化製品用のバッテリーメーカーとしてスタートしました。現在では世界有数のリチウムイオン電池製造メーカーとしても有名です。筆者の周りのエンジニアは、「BYDと言えばバッテリー」という認識をしている人も、多く見受けられました。

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本社ショールームには、スマホ用のバッテリーからラジコンやコードレス電話、掃除ロボット「ルンバ」のバッテリーなどが展示

そんなBYD社は、創業当時は従業員数が20名ほどしかいませんでしたが、創業から20年で20万人を超え、急成長を遂げています。20年で20万人ということは、単純計算で1年に1万人ずつ増えているいう、とんでもないペースです。今(2019年現在)では、約25万人の従業員を抱えています。

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BYDの本社、敷地の奥に従業員向け社宅のアパート群が見える

バッテリーと電気自動車。この2つは、どちらも電気を扱うということで、その構成部材や仕組みはとてもよく似ています。またそれ以外にも、同社はスマートフォンの外装、ソーラーパネルなどの製造も行っています。どちらもバッテリー製造から派生して広がっていた事業です。

このスマホやタブレットのケースも、誰もが知っているような有名どころが多く名前を連ねています。2年前にもこのケースを製造している工場内を見学しましたが、日本製の工作機械がフロアーを埋め尽くしていて、それが何十台と並んでいる姿は圧巻でした。

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このメーカーのパネルはBYDが作っていたのか、というものがたくさんあった

「売ってくれる会社がないなら自分たちで作るしかない」エアバッグも自社開発

そんなBYDも順風満帆で成長してきたわけではありません。電気自動車事業に乗り出したものの、実績がなかったBYDには、その安全の要とも言える「エアバッグ」を販売してくれる会社がなかったのだそう。そこで「売ってくれる会社がないなら自分たちで作るしかない」と、エアバッグを自ら開発することにしたそうです。

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写真左:手に入らないなら、自ら作る!ものづくり精神あふれるエピソード、右:スマホの外装などを制作している工場。残念ながら内部は撮影禁止

また電気自動車だけでなく、ガソリン自動車も販売している同社は、そのガソリン自動車のエンジンも自分たちで開発しています。

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写真左:電気自動車だけではなく、ガソリン自動車もしっかりと取り組むというそつのなさ、右:深セン市内の車両によくついているのを見かける光るBYDのロゴエンブレム

BYDが自動車事業を開始したのは、2002年に地元中国の自動車会社を買収してから。バッテリーと電気自動車というシナジーが見えていたとはいえ、創業から7年目のこと、驚きです。

このBYDの電気自動車は、深センのタクシーなどに多く納入されています。10年前に導入された20万台の電気自動車タクシーは、走行距離が10万キロを超えたため回収され、そこで使用されていたバッテリーは給電スタンドのバッテリーへと転用されています。

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写真左:深センの地下駐車場で見かけた電気自動車用の充電ステーション、右:中国の電気自動車の充電ブラグはGB-T規格

中国の電気自動車の充電ブラグはGB/T(中華人民共和国国家標準)規格で、日本のCHAdeMO(日本の電気自動車の急速充電方法の商標名)とは異なりますが、2020年には日中の共同規格が策定される予定です。こんなところにも、トヨタと電気自動車を共同開発する日中両者の思惑がありそうです。

そしてモノレール、都市のモビリティーをリードする会社へ

そんなBYD社が、電気自動車同様に力を入れているのが、2016年に発表されたモノレール事業。本社前には実際のモノレール駅があり、工場の敷地内をモノレールが走行しています。試乗してみたところ、加速がスムーズでとても安定した走りでした。最近では、マイアミ市への導入計画がニュースになりました。

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写真左:電気で動くものなら、モノレールまで、右:本社敷地前にある本格的なデモンストレーション用の駅

文・写真:美谷広海

FutuRocket株式会社 CEO & Founder。マイクロハードウェアスタートアップとして日本と海外(主にフランスを中心とする欧州や深セン、アメリカなど)をノマド的に行き来しながら、事業立ち上げのため奔走中。

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