【単独インタビュー】エンジニアよりも「プロトタイパー」。これからの世の中が必要とする人材を育てる『ProtoOut Studio』とは何か

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写真左:菅原のびすけさん、右:伴野智樹さん

一般社団法人MA(MashupAwards)理事の伴野智樹(ばんの・ともき)さんと、dotstudio代表で、国内最大級のIoTコミュニティIoTLTを主催している菅原のびすけさんがタッグを組んで、プロトタイプを作れる人材を輩出するためのプロトタイピング専門スクール『ProtoOut Studio(プロトアウト スタジオ)』を、6月に開講します。このスクールは、今までのエンジニア向けスクールとはどこが違うのでしょうか。二人に直撃インタビューしました。

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プロトタイプの定義は「自分発信で作ったもの」

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——まずはここで、プロトタイプがどのようなものなのか定義したいと思うんですが。

菅原のびすけ(以下、のび) サービスとしてプロダクトアウトする手前で、自分発信で作ったものって定義してもいいかなと思っています。ものづくり文化、メイカー文化から見出されているものかな。

伴野 その名の通り、試して作ったモノですね。その後プロダクトに向かうかもしれないし、向かわないかもしれないモノかな、と。言うなれば、試して作ったアウトプットですね。でもペーパープロトタイプとは違って、やはり実際にプログラミングすることを前提としたプロトタイプを今回は目指しているようなイメージです。

——そのプロトタイプにはソフトウェアやハードウェアなどの区切りはありますか?

のび 限らないですね、何でもありだと思っています。

ものづくりをする人のキャリアや社会への接続はまだまだ未成熟

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——この「プロトタイピング専門スクール」を始めようと思ったきっかけはなんですか?

伴野智樹(以下、伴野) 僕はMA(MashupAwards、国内最大級の開発コンテスト)の理事をやっていますが、今回のProtoOut StudioとMAが望んでいる世界は、大きくいうと同じだと思っています。つまり、根本にはものづくりをする人材を増やしたいという思いがあり、MAはコンテンツの発表の場として、スクールはそのMAなどにチャレンジする人口を増やしていく場、といったイメージで、ベクトルは同じだなと。

——今までのMAだけでは足りなかったということでしょうか?

伴野 ええ、そういった意味ではまだまだ足りていないと思います。MAが目指す世界とのびすけさんのdotstudioが目指す世界は似通っていますが、それぞれが現在起こしているアクションだけでは、その世界にたどり着くのに全然足りていない。

このあと、もっと具体的な話になってくると思うけど、プロトタイパーの社会的なポジションであったり、キャリアの在り方、ロールモデルなどは、このメイカーブームで成長してきている部分はあるものの、まだまだ未成熟だと思います。MAはもう10数年続いているコンテストなので、そのまま保ち続けたいとは思いますが、そこでものづくりにチャレンジしている人たちが、その後どういうキャリアを進んでいくのか、あるいはどうやって社会に接続していくのか、それを見つけることが今回のスクールのひとつの解だと考えています。

プロダクト手前の“プロトタイプ”が埋没する今の仕組みじゃもったいない

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——このスクールの目的は、MAに作ったモノを出す人を増やすことでしょうか? それともMAに出したモノをアウトプットする人材を増やすことでしょうか?

伴野 それでいうと前者ですね。MAに限らなくてもいいですが、このスクールの最終目標が多岐に渡ってもいいのかな、と個人的には思っていまして。なので、MAに出して、賞を取ることをゴールに設定してもいいでしょうし、その後、事業につなげる人もいていいと思います。

——このスクールを始めようと言い出したのはどちらからですか?

のび これは僕からですね。さっき伴野さんが言っていたキャリア的な意味合いもあるんですけど、僕はジーズアカデミーという起業を目指すエンジニアを育成するスクールのメンターをずっとやっていて、その中である生徒が「起業したいわけでもないし転職したいわけでもないから、モチベーションの置き方が難しい」というようなことを言っていたんです。

その人はもともと起業するつもりも転職するつもりもなくて、エンジニアっぽいことを勉強してみたいとか、今自分が所属している会社で抜きん出るためにエンジニアの能力を身につけられないか、みたいな感じで来ていたんですよね。そういう人たちって、既存の枠組みで考えると行き場がなくて、自分が作ったモノをどうやって昇華させようか、迷いを感じていると思っています。

そこでその解を見つけるべく、「スクールで作った卒業制作を企業にバイアウトする」ということを試してみました。そうしたらうまくいき、その生徒の一つの実績にできた。こうなると、プロダクトを売りました、っていうキャリアになるかなと。

MAのようなコンテストで賞をもらえれば、その人のキャリアになったり、次につながったりするんですけど、プロダクトまで行かないプロトタイプぐらいの微妙な段階だと、賞をもらえなかった人たちは、そのプロダクト自体も埋没してしまうし、その人のキャリアも結局なにも変わらない、っていうことになるんですよね。なんか何にもなっていないな、と。

そのもったいなさがどうにかならないかな、と思ったんです。その解決の鍵が、プロトタイプをもっと持ち上げて、世の中に接続させていくことじゃないかなと。そうしないと本当に作っておわりになっていくんじゃないかな。

いろいろな人がメイカーブームって言っていて、楽しいからいいね、っていうのももちろんあると思いますけど、このままではニッチな世界で終わってしまう。

Maker Faire Tokyoの参加者が年々増えているとはいえ、まだキャズムは全然越えてない。もっと英語教育みたいに、この領域が市民権を得てもいいんじゃないかな、と思うわけです。

伴野 今話をしていて、やはり多くの人に伝わりにくいと感じているのは、作ったプロトタイプが社会やビジネスに接続していくっていう行為が、まだ日本だとそんなに多くないからかな、と思っています。

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伴野「ものづくりが民主化しているのに、思いついたことをアウトプットできないのはナンセンス」

——このスクールでは、どういった人が来ることを想定していますか?

のび ひとつは、今までそういったスクールに通ってはみたけど、結局何も作れなかった人や、何か作ってみたいと思っている人。もうひとつは作る能力というか、何か作ってみたことはあるんだけど、それを世の中に結びつけることができていないような人。そういう人に参加してほしいですね。

私が所属するdotstudioでは、大手企業などでIoT領域の研修をしているのですが、某大手通信会社の研修をしていたときに、その担当者から社内のプロトタイパーを育成できないかと言われて。そこで、その社内の非エンジニア向けにプロトタイパーの育成講座をしたんです。

そのときわかったのは、ゴリゴリのコードを書くエンジニアよりも、企画段階でいろいろと手が動かせるプロトタイパーを望んでいる大手企業が増えてきているんだなぁと。でもそこを育てる場所が不足している。であれば、これを一般化してもっといろいろな人に広げられたらいいな、って思ったのです。

伴野 このスクールの参加者については、究極的には、誰でもいいと思っているんです。この辺はのびすけさんと意見が違うところかもしれませんが、誰もが作れればいいと思っているんですよ。クオリティの差はあれど。これだけものづくりが民主化している中で、思いついたことをアウトプットできないこと自体がナンセンスだと思うわけです。

すべからく多くの人たちがメイカーであるべきで、そうあることによって身につける技能や経験、あるいはプロダクトマネージャーの能力とか、現状のキャリアに活かせることが、多分メチャクチャたくさんあるはずで。だから今広報をやっている人だろうが、広告代理店で企画をやっている人だろうが、あるいは営業であっても、最終的にはみんなメイカーになっていってほしいな、と思っているんです。

社会とメイカーコミュニティのハブになりたい

のび 下のスライドは、この前IoTLTで僕が話したものです。僕はすべての人が作って楽しいよねって思える、そんな世界観を目指しています。ただそこを目指すにあたって、やっぱりまだ距離が遠いな、と感じていて。それは何かっていうと、先ほども言いましたけど、「ものづくりをして楽しいよね」が、「楽しい」だけで終わってしまっていると広がらないな、と。

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この図で上にいけばいくほど社会に接続しているっていう意味なんですが、この逆三角形の入り口の部分、ここがズレていると思うのです。この入り口をマッチングさせるのが僕らの領域かな、と。

——たしかに、企業のハッカソンなどを見ていると、参加者と企業の思惑がマッチングしていないイベントが多いですよね。

のび それについては、両方からのアプローチが必要だと思います。企業がプロトタイプ=試作品としての理解度があまり高くない中で、すごく期待度が上がってしまっていたりするし、逆にものづくり側に対しては、作るって楽しいよね、だから一歩上を目指そうよ、というところへ持っていかないといけない。つまり主催者が、企業側のハードルを下げることと、メイカー側を持ち上げることがポイントなのかな、って思います。

「プロトアウト」=プロトタイピングして次に進むことを普通の選択肢に

——ProtoOut Studioの最終目標というか、卒業時の目標はあるんですか?

のび 今のところ、アウトプットを最終目標としていますが、これは変わるかもしれません。作ったプロトタイプを企業にバイアウトするとか、マネーの虎みたいなことができれば楽しいのかな。社長もしくは決裁者を呼んで、卒業製作での場でそれを買うとか買わないとか。

あるいはProtoPediaみたいに、プロトタイプを並べて、そこでそのプロトタイプを買えるサイトを作るのもいいかなと思っていて。スクールの卒業者以外でも、すでに作っているよっていう人と企業側のマッチングもできたらな、とも思っていたり。

伴野 ちょっとなにが適切なのかは、我々がまだプロトタイプな状態なので、見えないところは多いんですよ。もしかしたらのびすけさんが言ったとおり、マーケットプレイスを開いたら、買い手が付くような世界かもしれないし、企業からテーマを与えられて、企業がハッカソンをするのと同時にこのスクールにテーマを持ち込んでくるスポンサー式もあるかもしれないし、もしくは共同研究みたいな形になってくることもあるかもしれない。そこはいろいろな方向性があるなと思いながらも、我々も一緒に進みながら定義していくしかないかな、と思っているところです。

のび アウトプットは現状の着地点のひとつだと思っています。作ったプロダクトをもっと世の中に出そうよって言ったときに、ものづくりのハードルはドンドン下がっているのに、モノを出すときは起業しなきゃいけないとかハードルが高くなっている。世の中にものを出すときって本当に起業しかないんだっけ?っていうのが、僕からすると疑問で。ちょうどいい着地点で世の中にモノを出せたね、っていうポイントが「アウトプット」っていう表現なのかな、と考えています。

伴野 最終的には、この「プロトアウト」という造語が流通してくれるとうれしいですけどね。プロトタイピングして、次に進むっていう意味として。それがものづくりとかエンジニアとかの間で言われるようになるとうれしいなあと。

protoout.studio


文:藤倉涼、写真:三條康貴

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