先日、IoT鳩時計「OQTA」(オクタ)を実家に導入してみました。結論から先に言うと、このOQTAで家族の形を見直すきっかけになるかもしれません。それくらいとっても感じのいいものだったんです。
両親と離れて暮らすようになって、20年近くになります。定年を迎えた彼らの楽しみは目下、スポーツや旅行、上海で暮らす孫とのiPadを使ったFaceTimeといったところです。
子どものいない私は国内にいるものの、頻繁に実家に帰省しているとは言いがたい状況。正直なところ、帰省がとても億劫に感じています。
両親との関係が悪いわけじゃありません。兄弟含め、家族関係は良好です。忙しさにかまけているだけなんですが、私のような人間は東京で働く息子の典型だと思っています。
不届き者と言われてしまうかもしれませんが、両親の誕生日当日に「そういや誕生日だな……」と思い出すくらい。いわゆる普通の親不孝者くらい、じゃないですかね?
キズナ聞こえる鳩時計「OQTA」 CONCEPT MOVIE
とある取材で出会ったのがOQTAという名のIoT鳩時計でした。取材が終わると、クラウドファンディング中だったOQTAを迷わず支援している自分がいました。
一般的に鳩時計は時を報せてポッポと鳴くものですが、このOQTAは時を報せるのではなく、アナタを想った人に(アナタの想いを)報せて鳴く、そんな鳩時計です。
またそれは、鳩時計のある場所に向けて想いを届ける、まるで伝書鳩のような存在でもあります。
「ポッポ♪」と鳴くその音色はとても柔らかく、まるでふわっと香るフレグランスのような空間に調和する音色。
この音色、実は国内で唯一アナログのフイゴ機構を製造するリズム時計によるものです。スマートフォンのアラームとはひと味違ったものがあるんですよ。
1台のOQTAには最大8人のメンバーを登録可能で、メンバーはスマートフォンのアプリを介して、遠隔地の鳩時計(OQTA)を鳴らします。
アプリのボタンをタッチして30秒くらいでしょうか。
ポッポ♪
の鳴き声とともに、時計上部から木製のハトが現れます。これが実にかわいいんです。
なお、OQTAからは誰が鳴らしたのかはわかりません。8人のメンバーのうちの誰か、しかわからないんです。
実家にOQTAを導入しようと思ったのは、両親の喜ぶ顔がはっきりと想像できたからです。
以前帰省した際、両親が自慢気にiPadを見せてきたことがありました。上海赴任中の私の兄弟にFaceTimeで連絡をとったのですが、その目的は上海にいる孫二人とiPadを使ってやりとりするためでした。
私は、結果的に孫に会うためのダシに使われたわけです。ですが、そのときの両親の姿が今でも忘れられません。なんとかして孫の機嫌をとろうと陽気にふるまう両親の姿はまさに人の子、いえ孫のジジババでした。
OQTAがあれば、FaceTime以外でも上海の孫たちが「ポッポ♪」のボタンを押すかもしれません。もちろん私も押しますが、誰が押したのかわからないのがポイントです。
おそらく両親は孫が遊びで押したと思うでしょう。それでいいんです。それでニヤニヤして、嬉しくなってくれたらそれが一番です。
誰がために鳩は鳴く—— IoT鳩時計「OQTA」のポッポ♪を聞きながら
実家でOQTAのセッティングをしながら、簡単に説明しました。この鳩時計は時報で鳴くのではなく、私か私の兄弟たちがアプリをタッチした時に鳴くんだよ、と。
幸いなことに、両親はすぐに意味を理解してくれました。FaceTimeをしながら孫がボタンを押せば鳩は鳴くのか、確認されました。
設置して数日、打ち合わせ終わりにボタンを押すと、親から電話がありました。「今、鳩が鳴いたわよ」と報告がありました。
それからこちらも仕事の合間など、ちょっとした隙間時間にボタンを押すようにしました。
しばらくして両親からSMSで「鳩が鳴きました」と報告がありました。何度かボタンを押したことを伝えました。いつもリビングにいるわけではないので、全てに気づいたわけではなさそうです。
さらにその翌日「夕べは上海から鳩がなきました」と連絡がありました。OQTAは誰が鳴らしたことがわからないので、FaceTime中にOQTAを使ってみたか、鳩が鳴いた連絡を兄弟にもしていることになります。
仕事もあるし、毎日のように両親に電話し、近況を報告するなんてことは今後もなさそうです。しかしOQTAはアプリのボタンをタッチするだけ。こちらも重たくない形で気にかけていることが伝えられます。
また想いの受け取り手である両親は、鳩が鳴けば「ポッポ♪」の送り主を想像することになります。きっと、勝手に孫がやったと都合よく解釈してくれるはず。なんて現代的でステキなツールなんでしょうか。
この原稿を書くにあたって、両親に電話をかけてOQTAの感想を聞いてみることにしました。
実は、最近は両親に電話をかけるのもなんだか敷居の高さを感じていたのですが、OQTAをきっかけにメールのやりとりをしていたせいか、こちらから気楽に電話できました。
上海との「ポッポ♪」のやりとりは案の定、FaceTimeと同時に使ったそうです。実家のiPadが鳩が出てくるところを映し、上海の孫がアプリのボタンを押します。ポッポ♪と顔をのぞかせる木製の鳩に、孫たちがすごく喜んでいたと話していました。
私は、両親が喜んでくれるかなと思ってOQTAを贈りました。その両親は、孫を喜ばせるためにOQTAを使いました。それが両親を喜ばせ、結果的にそれが私を嬉しくさせました。
想いとは、相手の心と書きますよね。OQTAが届ける想いって、相手を思う心そのものなんだな、なんてあらためて感じます。
さて、素敵な気持ち一杯でこの文章は終わります。先ほど、両親から「たまにはご飯を食べにおいで」と言われたところです。
- 文:津田啓夢
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エディター。0歳で単身渡娑婆。一喜一遊、 一期は夢よただ狂え。ワクワクを食べて生きる人。演劇→写真→アート→メディア。企画、編集、動画、執筆&撮影、イラストのほか、イベントや広告企画なども幅広く手がける。趣味は手ぬぐい集め(地味)。