- What is はてな?
- “特務プロジェクト”としてスタートした「はてなブログMedia」
- 初めてのオウンドメディアに選ばれるワケ
- ブログサービス15年、長い経験に価値がある
- 動画全盛の時代、追い求める豊かなテキスト表現
- はてなのファンコミュニティとオウンドメディアでユーザーを回遊させたい
What is はてな?
──まず、はてなという会社についてお聞きしたいのですが。
松本 はてなは2001年、京都で創業しました。はてなブックマーク、はてなブログなどの個人ユーザー向けWebサービスを独自に企画・開発してきた会社です。現在でも本社である京都に開発メンバーの多くが集まっていますが、東京との二拠点制になっています。
“特務プロジェクト”としてスタートした「はてなブログMedia」
──はてなは今までコンシューマー向けというイメージがありました。企業向けに、「はてなブログMedia」を提供することになった経緯を教えてもらえますか?
松本 もともと、個人向けサービスの提供で培ったノウハウや技術力を活かして企業との共同開発に取り組んだ事例はいくつかありました。「はてなブログMedia」もその一環で、「はてなブログ」を企業のオウンドメディア構築のためのCMS(Content Management System:コンテンツ管理システム)にできないか、というところから始まりました。第1弾として、ぐるなびさんの「みんなのごはん」での導入からスタートしました。それが2014年3月です。
──開発はどのようにスタートしたのでしょうか。
松本 最初ははてなブログに機能を追加する形で、開発チームの「特務プロジェクト」としてスタートしたんです。はてなブログがスタートしたのが2012年だから、やっと軌道に乗り始めたところなのに、新しいプロジェクトをスピンオフして始めるなんて、無茶ですよね(笑)。
──そのときは何名ぐらいで開発していたんですか?
松本 はてなブログ、はてなブログMedia合わせてエンジニア7名、デザイナー2名、ディレクター2名だったかな。少数精鋭ですね。
初めてのオウンドメディアに選ばれるワケ
──当時は、オウンドメディアがどのぐらいの市場規模になると思ってましたか?
松本 そうですね、米国ではそのころ「企業はオウンドメディアをもち、独自に発信すべき」というような意識が生まれ始めていたと聞いていましたから、市場規模はかなりあるだろうと考えていました。
──実際、現在はどれくらいのオウンドメディアが使っているんですか?
松本 約50くらいですね。その中で40くらいが新規でオウンドメディアを始めた企業です。
──はてなブログMediaが、新規でオウンドメディアを始めたいっていう企業に選ばれている理由って、どこにあるんでしょう。
松本 オウンドメディアをイチから立ち上げようと思うと、CMSの導入だけでなく、サーバー構築であったり、立ち上げ後のシステム保守をどうするか、など様々な観点で調査や準備が必要なんです。
──たしかに周りでも、ある日突然会社のオウンドメディアの担当になって、困っている人っていました(笑)。
松本 そういう方でも、はてなブログMediaは、SaaS型(Software as a Service:クラウドで提供されるソフトウェア)のサービスなので、導入してすぐにメディアを立ち上げることできるんです。それがいちばんの特徴ではないかと。
──それは心強いですね。慣れない担当者にとって、使いやすさも大事だと思うんですけど、それに対してのUIへのこだわりとかはあるんですか?
松本 シンプルで直感的に使えるように、ということを心がけています。たとえば、2015年に編集画面をリニューアルしているのですが、よく使われる機能は画面の表に出して、使わない機能は奥にしまうようにしています。機能が多すぎると、使う人が戸惑いますから。
ブログサービス15年、長い経験に価値がある
──すごくシンプルな質問していいですか。はてなブログMediaって他のサービスと比べて、価格が高い気がするんですけど、その理由を教えてもらってもいいですか。
松本 我々はこのサービスが決して高いとは思っていません。はてなブログMediaには、「システム基盤」「SEO」「インターフェイス」といった部分に、はてなが長年培ってきたノウハウが詰まっています。使いやすく、余計な手間がかからないことを意識して各種機能を揃えているので、運用効率は軽減され、脆弱性対策も不要なので、相対的なコストで比較すると高くならないという理由で導入が進んでいるケースが多いです。
──となるとそれが、はてなの価値でしょうか。具体的に他社との違いはあるんですか?
松本 新規読者を獲得するための各種機能が揃ってることなども挙げられます。ソーシャルメディアとの連携機能などはもちろん、AMP対応やインスタント記事対応などについても、トレンドに合わせてアップデートしていくことは特徴的かと思います。あとは外部配信支援として、スマートニュースさんへ配信するためのフィード変換ツールも提供しています。
実際に使ってらっしゃるご担当者様から「便利」だと好評いただいている機能でいうと、ブログメンバーがありますね。はてなIDをもっていれば、誰でも記事を下書きに入れることができる。たとえばライターさんがはてなIDをもっていれば、下書きで入稿してもらって、その下書きを編集者が確認してアップできるという機能ですね。地味ですが、こうした機能は日々の作業効率を左右すると考えています。
──なるほど……。それ以外には?
松本 あとは、スマートフォンのアプリで下書きを確認できて、アプリで公開できるのが便利だと言っていただきますね。出張が多い編集担当者から、主張先でライターさんが入れてくれた原稿を見て、そのまま公開できるのが便利だと言われたことがありました。
──技術以外にもこれだっていう特徴ってあります?
松本 私たちは改善を日々繰り返して、サービスを続けていくことを大事にしています。はてなのように、15年もの長い間ブログサービスを提供している会社はなかなかありません。大規模なサービスの開発と運営で培った経験は、他がまねできないところかと。
──そこに価値があると。
松本 そうですね。
動画全盛の時代、追い求める豊かなテキスト表現
──今後のオウンドメディアの可能性について。
松本 実は私、はてなに来る前の2012年まで大手SNSを運営する会社に在籍していたんです。当時でも、企業がSNSを活用することは当たり前になっていました。
その社内でも、企業がメディアをもって、情報を発信していくという予測はしていましたね。SNSは単なるプラットフォームになって、コンテンツは企業のメディアで運用されていく予感があったんです。
そういう背景もあったので、はてなブログMediaには可能性を強く感じました。
──そういえば、松本さんは芸術大学出身なんですよね?ブログを表現のひとつとして見たときに、その表現の手段はどうなっていくと思いますか?
松本 表現するハードルを下げたいというか、表現するチャンスを多くの人に提供したいという思いが私の仕事の原点になっている部分で、はてなブログ、はてなブログMediaは、そのど真ん中、ストライクゾーンにいるという感じですね。個人や企業が特別なスキルや知識がなくても、想いが書ける場を提供することが、私の使命だと思っている部分もあります。
今は動画など表現が多様化していますけど、その中でもテキストで書くということは、もっともシンプルな表現で誰でもできることだと思うんです。そういう基礎的な表現であるテキストは、これから先もなくなっていかなと思っています。だから、テキスト表現をより豊かにする改善を行なっていかなければならないと思っているんです。
──表現の多様化と言えば、DMMから出ているTELLER(テラー)という、LINEみたいなショートメッセージ形式で小説を書いていくアプリがあるんですけど、これが意外と書くのが難しい。会話でストーリーを進行させていくんですけど、ぜんぜん書けないんです。でも10代の子たちはスラスラ書いていて、「よくこんなストーリーが思いつくなあ」と感心しちゃうんですよね。
松本 私も似たような体験を前職にいたときにしました。当初、私の携わっていたSNSでは日記を書く機能がメインだったのですが、2009年頃にTwitterのような、つぶやきの機能を追加したんです。そのときに、社内で議論になったのが「タイトル問題」でした。日記はタイトルがあって、文章を書くという構造で、つぶやきはいきなり内容から入る。タイトルという前提がないままに文章を書くことが難しいのではないか、と議論になりました。今となってはタイトルがないことがごく当たり前なんですけどね。
LINEが出たときも、あのスタイルには最初みんな戸惑いがあったと思うんです。こういうふうに、テキストに新しいスタイルが出てくるというのは、これからも起こり続ける変化でしょうね。
はてなのファンコミュニティとオウンドメディアでユーザーを回遊させたい
──最後に、はてなブログMediaをこれからどのように進化させていきたいですか?
松本 そうですね、はてなという大きなコミュニティと企業をつなげる施策がもっと打っていければな、と思っています。
──tsumug edgeで、はてなブログMediaを使おうと思ったのは、はてながユーザーから愛されているサービスだという理由が大きいんです。tsumug edgeが、「はてなのコミュニティと組めば何かいろいろできるかもしれない」という期待があって。
松本 そこを評価していただけて光栄です。ソーシャルメディアでの拡散の起点になりうる「はてなブックマーク」とのシナジーで、「はてなブログMedia」を選んでくださる導入企業さんも多くいらっしゃいます。でも実は、私は逆もあり得るんじゃないかと思っていて。それはつまり、企業のオウンドメディアを通して、はてなのユーザーが今まで知らなかったようなジャンルの企業と接点をもつことがあるのではないかと。
加えて、はてなに関わりがなかったような人々が、企業のオウンドメディアからはてなのコミュニティに入ってくることも起こりうるんじゃないかと。今までインターネットでは扱われなかったコンテンツがオウンドメディアの中から出てくる可能性もありますよね。そこに新たなユーザーが付いていき、そこにはてなも関わっていくーーという夢を描いてます。
──tsumug edgeとはてなのユーザーが回遊するということですね。夢が膨らみます。
-
-
-
-
-
-
-
-
- -
-
-
-
-
-
-
-
インタビューから、はてなの長年培ったブログメディアに対するスピリットを感じました。
個性的な「はてなユーザー」と、モノづくりの感性をもった「tsumugの人々」。はてなの土壌で混じりあうことにより、どんな化学変化が起こっていくのか、期待が高まります。
- 文:藤井 武
-
ライターを目指すSier勤務のエンジニア。IoT分野はただ今勉強中。tsmug edgeに関わりだしてから、家に深セン発の怪しいガジェットが増えた。中華製デジタルアンプがお気に入り。
- 写真:山﨑悠次