世界最大のメイカーフェアの裏で──ルクセンブルクの片田舎で、体育館ほどの広さの小さなメイカーフェアが開催

5月19日、米国のベイエリアで世界最大のメイカーフェア(Maker Faire BayArea)が開催されました。実はその裏で、ヨーロッパの小国ルクセンブルクのさらにその田舎で、ルクセンブルク初開催となったミニメイカーフェアが開催されていました。

ルクセンブルク首都から車で1時間、田舎町「ロスポール」で開催

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メイカーフェア会場の外で営業している飲食スタンドとロスポールの風景。奥の丘は川向うのドイツ

メイカーフェアは、ものづくりの人たちを中心に、その作ったモノを展示したり販売したりするイベントです。サンフランシスコのベイエリアで行われる世界最大級のメイカーフェアは、スポンサーなどの開催費用の問題により、2020年以降の開催が危ぶまれていますが、他方メイカームーブメントは世界中に広がり続けています。

私は、2018年のウクライナのキエフのミニメイカーフェア(ウクライナでは他にもオデッサなど計4箇所でミニメイカーフェアが開催されています)で私たちが作った「Hackfon」を出展したことがあります。それに続いて、2019年はルクセンブルクのミニメイカーフェアにも出展できました。

ルクセンブルクはフランス、ドイツ、ベルギーの国境に位置した神奈川県ほどの大きさの小国。人口は約48万人。そしてこのルクセンブルクの首都から車で1時間ほどさらに離れた、ドイツとの国境に近いロスポール(Rasport)という町が、今回ルクセンブルクでメイカーフェア初開催の会場でした。

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左側がルクセンブルク。川が国境となっており、右側がドイツ。

ロスポールはこのような川沿いにキャンプ場がある小さな田舎町。町の外れには川沿いに建てられたミネラル工場があります。ルクセンブルクで販売されているミネラルウォーターは、だいたいこのロスポール産のもので、ルクセンブルク滞在中どこでも見かけました。

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ルクセンブルクではどこでも見かけるロスポールのミネラルウォーター

前日にパリからルクセンブルクに到着したので、主催者の好意で前日に会場の横で行われたBBQ大会に招待してもらい、参加してきました。

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バゲットに挟んだ豚肉

ルクセンブルクの公用語は、フランス語、ドイツ語、ルクセンブルク語。国境に近いこの場所でもフランス語を話す人が多かったです。BBQのソーセージは、ホワイトソーセージもあるドイツ風。これがとても美味でした。

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こんがり焼けたソーセージが美味

体育館ほどの広さも、充実の展示ぶり──会場「Tudor Museum」

会場となったのは、Tudor Museumという科学館の敷地にある公共の体育館のような多目的ホール。会場の横では、子どものための遊具などもあり、メイカーフェアならではの廃品を利用した展示物も置いてありました。

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自動車のホイールカバーを再利用した音が出せる展示物

会場は、ちょうど体育館の中全体という感じ。そう、これですべて。小さなメイカーフェアですが、中身は驚くほど充実したものでした。

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会場は体育館くらいの広さ、ドローンレース用のサーキットもある

STEM教育用の独自Arduino「Kniwwelino」

主催者から聞かされたのが、ルクセンブルクにはSTEM教育用の独自の「Arduino」があるとのこと。設営準備中に早速、それを見せてもらいました。

その名もKniwwelino。発音が難しくて、クニヴェリーノともちょっと違う、フランス語にもない発音。「micro:bit」に近いボードです。ルクセンブルクのような小国でも独自設計のマイコンボードを使っているとは!

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Kniwwelino。丸くてコンパクトで使いやすそう

プログラムも下のように、Webからアップができるようになっています。これは使いやすそう。そしてKniwwelinoのアイコンが、女の子に耳が生えたようなキャラクター。葉っぱもあってたぬきっぽいですね。理由を訊きそびれてしまいました。

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プログラムのアップも手軽!

なんと飛行機を自作してしまった人まで

展示物の中でも圧巻だったのがこちらの飛行機。これも自家製なんです。

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自作したという飛行機

コクピットを覗いてみると、ダッシュボードにタブレットやスマホが取り付けられています。

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コックピットは意外としっかりできている

制作過程をディスプレイで紹介していましたが、本当に手作り……。

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ベニヤ板などで作られた機体

翼もこのように着脱できるようになっています。強度はこれで十分なようです。

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着脱可能な翼。持ち運び可能になっている

フランスからは、このようなスチームパンク感あふれる展示物が来ていました。銃のほうは光線銃として、射的ゲームを楽しむことができます。

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写真左:スチームパンク感あふれる展示物、右:光線銃で射的ゲーム

こちらはクルクルと無限に回るハンドスピナー装置。

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自動で回るハンドスピナー

親子連れに人気のワークショップ

来場者は家族連れが多く、自分たちの作品を展示しているブースよりも、ワークショップが人気を集めていました。同じ時期に、ベルリンのメイカーフェアに参加した人にもワークショップコーナーが人気だったと聞きました。

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家族連れにはワークショップが人気

ここでは、ソラーパネルで動く花の形をした風車を製作できます。

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ソーラーパワーで動く花の形をした風車を作るワークショップは子どもにも人気

セルからモバイルバッテリーを自作してみようというワークショップもありました。

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モバイルバッテリーを自作するワークショップも

またMakeblockを使ったロボコンが会場を盛り上げていました。女性限定チームも参加。

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Makeblockを使ったロボコン、ロボコンはどこの国でも盛り上がる

子供のアイデアによるユニークな展示も

会場では、子供による作品展示も。この二人組みは、スイムキャップ内に距離センサーをつけ、背泳ぎをしているときに、ゴールの壁近くで頭をぶつけるのを防ぐアラート装置を試作。

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背泳ぎをしているときにゴールの壁近くで頭をぶつけるのを防ぐ装置

小学生の彼は、ソーラーパネルで動く模型船や、電動カートを自作していました。

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ソーラーパネルで動く模型船

ちょっとした工夫でおもしろかったのが、こちらの作品。二輪の電動モビリティーに板をつけて安定性を高めたもの。

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誰でも簡単に立つことができるのはもちろん、座って利用することも。またラジコンのコントローラでリモート操作することもできるように改造しています。

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ルクセンブルクは昔からものづくり精神あふれる国

このような小さなメイカーフェアでしたが、驚くほど濃い内容の展示が見れました。

来場者は1600人ほど。ですが、ルクセンブルクの首都で数日後に開催された「ICT Spring(スタートアップやアクセラレーターなどを集めた展示会。カンファレンスイベントは有料。)」も来場者は数千人ほどということで、ルクセンブルクではかなりの賑わいを見せたイベントになったのではないでしょうか。

最後に紹介したいのは、このメイカーフェアの会場になったTudor Museumの由来。

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このロスポールは1890年に、TudorさんがTudor Batteriesというバッテリー会社を創業した地で、Turor Batteriesでは今でも自動車用のバッテリーなどを生産しているそうです。

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このルクセンブルクの地にそのような歴史があったとは…。昔からのものづくり精神に触れることもできたメイカーフェアでした。

【おまけ】私の展示

会場の一画で、私も展示していました。

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代表を務めるFutuRocket社で手がけているデバイス「hackfon」とスマートIoTトイレットペーパーホルダーを展示

光るは正義! ということで、光り物があるとやはり興味をもってもらえますね……。

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ボタンを押すと光だけで、子供たちは食いつく

文・写真:美谷広海

FutuRocket株式会社 CEO & Founder。マイクロハードウェアスタートアップとして日本と海外(主にフランスを中心とする欧州や深セン、アメリカなど)をノマド的に行き来しながら、事業立ち上げのため奔走中。

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