働き方改革はスタートアップから始まる 「副業」→「複業」で実現する働き方2.0:第4回TORYUMON

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裁量労働制や高度プロフェッショナル制度といった労働法制に関する話題がニュースに踊り、リモートワークや時短勤務、副業やクラウドソーシング、会社オリジナルの特別休暇などの取り組みが話題になるなど、働き方に関する話題が盛り上がっています。

2018年10月8日に開催された、スタートアップを目指す福岡の学生たちのコミュニティイベント「TORYUMON」では、「時代遅れな働き方をぶっ壊せ ~未来の働き方とは~」と題したセッションで、学生とスタートアップ経営者が、これからの働き方について労働者と経営者の両方の立場から考えました。

Twitterで採用したエンジニアは16歳

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写真左:SCOUTERの中嶋汰朗代表取締役、右:tsumugの牧田恵里代表取締役

モデレーターを務めたのは、誰でも人材紹介できるソーシャルヘッドハンティングサービス「SCOUTER(スカウター)」を運営する中嶋汰朗(なかじま・たろう)代表取締役です。中島さんの会社では16歳のエンジニアが働いているそうですが、その人とはTwitterを通じて出会ったとのこと。最近は転職サイト以外にもさまざまな人材採用の手段があるのです。

「転職サイトで人材を探しても、そこにいるのはサイトに登録している人に限られます。だから転職サイトだけで若くて優秀なエンジニアに出会うって難しいんです。でも、Twitterはほとんどのエンジニアが登録していて、情報収集や発信しています。うちで働く16歳のエンジニアは、Twitter経由でエンジニアが紹介してくれました。ちょっと変なやつではあるんだけど、エンジニアとしてすごく優秀。今は業務委託として案件単位で仕事をしてもらっていますが、フルコミットのエンジニアとあまり遜色のない金額は払っています。年齢ではなく能力で評価しないと優秀なエンジニアは他へ行ってしまいますから」(中島さん)

単独でLTE通信が可能なコネクティッド・ロック「TiNK(ティンク)シリーズ」を開発するtsumugの牧田恵里(まきた・えり)代表取締役は、イベント登壇がきっかけでインターン採用につながった事例を紹介しました。

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「今手伝ってくれている大学生インターンは、イベントに登壇したあとに『なんでもやるんで手伝わせてください』って話しかけてくれた人なんですよ。起業したいから、そこに向けたプロセスを学ぶ場としてスタートアップで働きたい! と言ってくれて、本当になんでもやってくれそうだったので、その場でエンジニアに紹介しました(笑) エンジニアからのテストをクリアできたら本採用ということで、クリアして、コーディングを勉強してもらうところからスタートしました。それからもう1年くらいになりますけど、業務に関われるくらいのレベルにまで成長してくれました」(牧田さん)

リモートワークだからこそ、感情をシェアすることが大切

採用手段が多様になることで、従来では難しかった人材へのアクセスが可能になり、ミスマッチなどの問題を事前に防ぐことも可能になってきました。しかし、人が一緒に働く上ではどうしてもエラーが起きてしまうもの。そこで中島さんはスタートアップならではの失敗例や、失敗を乗り越えるためにどのようなことができるか、登壇者に問いかけました。

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写真左:シューマツワーカーの松村幸弥CEO、右:YOUTURNの中村義之代表取締役

首都圏のスタートアップ人材と地方企業のマッチングサービス「YOUTURN」を運営する中村義之(なかむら・よしゆき)代表取締役は、起業直後のリモートワークで起きた事例を紹介しました。

「僕たちは創業時、3人でスタートしたんですけど、最初から完全にリモートで仕事をしていました。フルコミットしていたのは僕だけで、あとの2人は別の会社に所属したまま関わってくれていたんです。ただ2人に仕事をオンラインでお願いすると、仕事を振るだけのようになってしまって、すごく雑な印象をもたせてしまったんです。しかも2人がどういう状況なのかが分からないので、相手が辛い状況にいるのがわからないまま、いつもどおりに仕事を振ってしまったりする。これで感情的なコミュニケーションエラーが起きてしまったんです。そこで、『今日はどんな気分か』という感情を共有する朝礼を、毎朝リモートで行うことにしました。昨日いいことがあったとか、奥さんと喧嘩したとか、単純な内容ですが、そういうことを共有するだけで、感情的なトラブルはぐっと少なくなりましたね。リモートワークだからこそ、普段から他愛のない話をすることってとても重要だと思いました」(中村さん)

副業ワーカーは「自走」が原則、「副業をしたくてもできないレベルの人が圧倒的に多い」

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副業したい人と企業をマッチングする「シューマツワーカー」を運営する松村幸弥(まつむら・ゆきや)CEOは、人材マッチングの現状を説明します。

「大きな企業が副業を解禁したことが話題になったこともあって、副業やパラレルキャリアを望む人が増えています。シューマツワーカーにも月に200〜300人の副業希望者の新規登録があります。ところが、副業を希望する人の中で企業が求めるレベルに達している人ってそのうちの10%もいない。副業したくてもできないレベルの人が圧倒的に多いのが現状です。ここでいうレベルというのは具体的なスキルのことではなくて、仕事のやり方の話。自律して仕事を自走できる人が求められるんです。企業が副業ワーカーに仕事をお願いするとき、その人のマネジメントコストが新たに発生するのでは意味がないですから」(松村さん)

権限と予算、責任を渡して全部任せるtsumug

tsumugには正社員が一人もおらず、役員を除いた全員が業務委託で携わっています。先進的なワークスタイルが定着しているスタートアップを見回しても、tsumugのような組織形態を取っている企業はほとんどありません。なぜこのようなチーム形式なのかや、見えてきた課題について、牧田さんが語りました。

「ハードウェアエンジニアって、例えばバッテリーにすごく詳しいとか、分野に特化したエンジニアが多いんです。大手の家電メーカーはそれぞれの分野のエンジニアたちが複数のプロダクトを並行して進めることができますが、ハードウェアスタートアップだとそうはいきません。分野に特化したエンジニアを雇っても、その部分の開発が終わると居場所がなくなってしまうんですよ。そこで、必要な部分を業務委託でお願いしたことが今の形態のスタートですね。実際、優秀なハードウェアエンジニアってすでにいくつかの会社のプロジェクトに関わっている人が多いんです」(牧田さん)

「最初に苦戦したのは、私が知りすぎようとしたこと。全部を知りたいという気持ちが強くて、知識もないのに専門的な技術まわりのことまで全部理解しようとしていたんです。でもそれがエンジニアの負担になって喧嘩してしまったことがありました。『全部知りたいって言うなよ。知りたすぎ!』って。 だから私としては血反吐を吐くくらいの思いではあったんだけど、担当してくれる人に仕事だけでなく権限と予算、そして失敗したときの責任を渡して、全て任せています」(牧田さん)

「優秀な人材」とは

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ここで質疑応答に。参加者の学生からはまず「優秀な人材とはなにか」という大きな質問が投げられました。モデレーターの中島さんは「言われたことをちゃんとやれることが大前提」とした上で、優秀な人に備わっている要素を登壇者に問いました。

松村さんは「コミュニケーション能力」「オーナーシップ」「ストレス耐性」の3つのキーワードを挙げました。

「仕事をする上で、クライアントや上司って要件を抽象的に伝えてくることが多いんです。例えば『イベントをやりたい』というオーダーがあったとしますよね。そのときに必要なのはイベントをやるために必要なことを自分で因数分解できる能力です。場所はどこがいいかとか、スライドも必要だから作らなくては、マイクは何本必要か、スタッフはどれくらい必要か、告知や集客はどうするか......。このように『イベントをやりたい』という仕事を分解して自分の課題に落としこむこと、つまりオーナーシップが求められます。同時に、進捗を共有しながら、相手がイメージしているものと自分が進めようとしていることに齟齬がないかを調整するコミュニケーション能力も求められますね。そして最後はやっぱりストレス耐性ですかね。どうしても辛いことは多いけど、最後にはやりきる力がモノをいいます」(松村さん)

牧田さんはアウトプットの価値を考えられる人だと言います。

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「今のインターンとは、『伝えるスキル』と『価値の見える化』という話をしています。スタートアップで働きたい学生には、起業を見据えている人も多いので、自分の得意な表現方法として2〜3つの『伝えるスキル』を磨いてほしいということです。同時に、自分がしたことの『価値の見える化』もしてもらいます。例えば、課題があった時にその締め切りは自分で決めてもらうんです。すると、実際にその時間内でできたこと、オーバーしてしまったことを見て、目算の感度のようなものがわかるなと。そうして、自分のやれることの範囲が広がっていく人は凄いな、と思います」(牧田さん)

中村さんはチームを作るという観点から優秀な人材を語ります。

「優秀って言葉にもいろいろな定義がありますが、チームの視点からだと、やっぱり自分ができないことをやってくれる人ですよね。僕ができないマーケティングや広報などの業務もそうだし、エンジニアもそう。その分野でトップクラスだって言われるような人だと一緒にやりたいなと思います。さらに言えば目指すゴールに向けての道筋を考え抜いて実現してくれる人ですね」(中村さん)

副業ワーカーへの仕事の任せ方のコツ

続いての質問は、会社の仕事の一部を副業ワーカーにお願いする際に、働きやすい環境をどうやって作るかという点について。中島さんは副業ワーカーと仕事をする大前提として、相手にゴールを明確に伝えることが重要だと指摘。その上で先ほど議論に出た「全部を知りたがってしまう」という経営者の性格を踏まえて、副業ワーカーへの仕事の任せ方のコツを登壇者に問いました。

牧田さんは「副業」という言葉からくるイメージを変える必要があると述べます。

「“副業”を漢字の意味そのままで捉えると、サブの仕事って意味ですよね。でも、いま求められているのはマルチに仕事をすること、漢字で書くと“複業”だと思うんです。メインの仕事とサブの仕事があるのではない。その仕事のひとつとして関わってもらわないと、責任を持って取り組んでもらうのは難しいと思います。その上で、仕事だけではなく、予算や権限も一緒に渡してあげることがやっぱり大事ですね」(牧田さん)

松村さんは副業を紹介する立場から、副業を希望する人が求めていることを満たす重要性を指摘しました。

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「副業ワーカーを活用する上では、まず企業全体でチームの一員として受け入れることが大切です。外注扱いをしてしまうとおそらく定着してくれません。そして副業ワーカーがその仕事に求めている意味を把握する必要があります。なぜ休みや空き時間を使ってまで副業をするのか、その理由はもちろん個別に違いますが、優秀な副業ワーカーは仕事に対して明確なモチベーションを持っています。そのモチベーションとは何か。僕は『その会社のビジョンへの共感』『業務が面白いこと』『自身の成長につながること』『一緒に働きたい人がいること』そして『報酬がよいこと』の5つだと考えています。副業でのコミットメントを希望している人がこの5つのうちのどれを期待しているのか、最初にしっかりコミュニケーションをとって見誤らないようにする必要があります」(松村さん)

経営者にとっても、働き方は与えるものではなく選ぶもの。そんなことを考えさせられるセッションでした。第4回TORYUMONが行われた日の福岡は台風が接近。安全のためにイベントスタートを1時間遅らせ、セッションの時間も少し短縮されました。しかし時間のない中でも濃密な議論が行われ、学生たちは議論を熱い目線で見守っていました。セッション終了後に登壇者に話しかける参加者が多かったことも印象的でした。


文・写真:香月啓佑

「社員ゼロ」を実現するtsumugの働き方はこちらの記事をご覧ください

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