TCP/IPって建築っぽい⁉︎ コネクティッドカンパニーと建築系スタートアップの相似形:tsumug × VUILD クロストーク

f:id:yujihsmt:20190218103847j:plain
左から、池澤あやか、牧田恵里、秋吉浩気さん

tsumug(ツムグ)では「未来の鍵を創る」ことを通して、常に「未来の住まい」について考えています。鍵を安全にシェアできたら叶うこと、つまり人が他人の家に自由に安全に出入りすることができたら、コミュニティや生活スタイル、そして経済はどのように変わっていくのか——。

tsumugのCEOである牧田恵里が、tsumugと同じように自社サービスを通じて「未来の住まい」を考えているVUILD代表取締役の秋吉浩気(あきよし・こうき)さんとともに、まだ見ぬ「未来の住まい」をどう定義し、どう創るかを考えていきます。
(聞き手・執筆 池澤あやか)

VUILDの新サービス「EMARF(エマーフ)」とは

f:id:yujihsmt:20190128161632j:plain

—— 秋吉さんが代表を務めるVUILDは、2018年12月に新サービス「EMARF」のβ版をリリースしました。ひとことで言ってしまえば「簡単に家具などの木製製品のオーダーメイドができるサービス」ですが、どういったところに独自性があり、どういう想いでつくられたかうかがってもよろしいですか。

秋吉 EMARFは、僕らがベースとなるデザインのテンプレートを用意していて、ユーザーが高さや幅などいくつかのパラメーターを操作することで、その人の家や生活スタイルにぴったりのモノをオーダーできるサービスです。

ただ、それだけではありません。EMARFはFRAME(フレーム)を逆から読んだものなのですが、この名前には「ものづくりをフレームから変えていきたい」という想いが込められています。

f:id:yujihsmt:20190128161651p:plain
VUILDの新サービス「EMARF

秋吉 VUILDは、Shopbotというデジタルファブリケーションの機材を日本で販売している代理店でもあるので、日本全国の林業に携わる工房を中心に独自のネットワークがあります。

EMARFではこの強みを生かして、ユーザー自身が工房を選びその土地の木材で家具をつくるような、「何が欲しいか」ではなく「誰に作ってもらうか」から考えるような、地域性や個性を重視したものづくりに貢献したいと思っています。

f:id:yujihsmt:20190128161801j:plain

牧田 モノに生活をあわせるのではなく、生活にモノを合わせるという考え方はすごく共感できます。地域分散型のエコシステムでものづくりをする強みはなんですか?

秋吉 今までの家具ビジネスは、家具の工場がどこかから木を安く大量に買ってきて加工し、都市部で売るといった中央集権型の産業構造でしたが、林業の現場にデジタルファブリケーション機材があれば、加工データを機材に送って、その土地で出力して売るしくみができます。中間業社を挟まず、ハイクオリティでローコストなモノの生産も可能です。

牧田 実際にこのサービスはどうやって使うんですか?

秋吉 たとえばこのオフィスの壁沿いに4メートルくらいの棚が欲しいとき、まず作りたい工房を選んで、棚のテンプレートを選び、「幅4メートル」とパラメーターを入力します。パラメーターを変えて「計算する」ボタンを押すと、値段もシミュレートされて、「いいな」と思ったら決済ボタンで決済する、といった流れですね。

f:id:yujihsmt:20190128161835g:plain
EMARFのパラメーター編集画面。

牧田 おぉ、最初に工房から選ぶんですね。

秋吉 地域を大切にしたいという想いが強くてこの項目を最初にしてみたんですけど、やっぱりわかりにくいという話もあります(笑)。まだβ版なので、しばらくフィードバックを受けたりブラッシュアップしたりしながら、4月には本格的にリリースしたいと思っています。

つくり手は可視化されていたほうがいい

——実際にはつくり手が見えないモノのほうが多い思うんですけど、可視化されたほうがいいと思う理由はなんですか?

秋吉 大学の学部時代に専攻していた建築設計は、トップダウンという感覚が強いものでした。それを学んでいくうちに、建築物というのは、人々の生活に関わる大切なパーツであるはずなのに、それを学ぶ学生は誰も実感とリアリティをもって建築デザインをしていないということに対して、疑問を抱きはじめました。

大学院ではすこし軸をズラして、研究領域としてデジタルファブリケーションを扱う田中浩也先生の下で学びました。デジタルファブリケーションの出現によって、特殊な技能がなくても、テクノロジーでエンハンスすることで誰でもものづくりに参画できるようになる可能性が見えてきました。もしかしたら、見渡せるコミュニティの範囲内で、家すらも建てられるようになるかもしれません。

「知り合いが作った家」というだけで愛着が湧く気がするように、ユーザーとつくり手のつながりが可視化されると、ユーザーのモノに対する愛着も強くなり、ひいてはそれが生活の豊かさにつながっていくんじゃないかと思っています。

牧田 たしかに。今、ちょうどオフィスの真向かいにビルが建設されているところで、窓から作業員の様子が見えるのですが、こうして作る過程が見えているだけで、完成したときにすごく愛着がもてるような気が……。

f:id:yujihsmt:20190128161940j:plain

建築家と起業家は似ている?

——牧田さんも大学時代の専攻は建築ですよね。

牧田 実は昔から宮大工になりたくて。正直あまり大学に行く気もなかったんですけど、「大学には行ってほしい」という母たっての願いで、理工学部の建築学科に入学しました。新居千秋さんや遠藤政樹さん、小嶋一浩さんなどが講師を務める、異様に意匠に力が入ってた世代だったのですが、理工学部だと木造を教わらないので、興味のそそられる授業が少なく、なかなかにツライ学生生活でした。

ただ、建築というのはすごくつぶしの効く学問で、私は大学卒業後、建築業界ではなくインターネット業界に就職したのですが、インターネットのことをあまり知らないなかで初めて知ったインターネットの通信プロトコル「TCP/IP」がすごく建築っぽいって感じたんですよね。4層にもわたる構造が綿密に設計・実装され、社会インフラとして今なお機能しているさまが……ってこの感覚あんまり理解されないんですけど。

f:id:yujihsmt:20190128162022j:plain

秋吉 情報空間にせよ物理空間にせよ、あるところに構図を見出して、それを統合してかたちを与えられる人は、アーキテクト(建築家)と呼べると思います。

それでいうと、起業家もアーキテクト。起業家と建築家の職能はかなりシンクロしているんじゃないかと思っていて。そもそもアーキテクトってテクノロジーと社会をどうつないで統合していくかという職能で、起業家も要素技術とビジネスをスキームを使ってどうつないでいくのかを考える職能なので、視点は同じですね。

牧田 私は起業家の一番の仕事は人を巻き込むことだと思っているのですが、建築もいろいろな職種のいろいろな人をまきこまないと建物を建てることができないので、そういった面ではかなり近いように感じます。素晴らしい構想を練らないと、お金も調達できないし、現場のモチベーションを焚きつけることもできない。そして、完成したものが都市やコミュニティのなかでどういう役割を果たすのかにまで責任をもたないといけない。そういうところも似ていますね。

f:id:yujihsmt:20190128162109j:plain

後編はこちら
edge.tsumug.com


文:池澤あやか

1991年7月28日 東京都出身。第6回東宝シンデレラオーディション審査員特別賞受賞。タレントとしてTV番組への出演やメディア媒体への寄稿などを行う一方、エンジニアとして、Webサイトの制作やプロトタイプアプリケーションの開発に携わっている。

株式会社 tsumug | 〒810-0041 福岡市中央区大名 2 丁目 6-11 FUKUOKA growth next 301